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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 「赤羽は、僕の創造力をはるかに凌駕している」赤羽漫画家×犯罪ジャーナリストの異色対談【後編】
全っっっっっ然知らない街でおしゃべりしてみたものの……

「赤羽は、僕の創造力をはるかに凌駕している」赤羽漫画家×犯罪ジャーナリストの異色対談【後編】

■赤羽「愛」と今後の展望

丸山 知人が赤羽に住んでいて、たまに飲みに行くのですが、住宅地も飲み屋も風俗もあって、街としても発展していますよね。成熟しきって、端っこが腐っているような感じというか。清野さんは、赤羽の街をどう捉えていますか?

清野 恥ずかしい話、最初は上から目線で赤羽のことを描いていたんです。「どれ、いっちょ赤羽でも描いてみるか」と。でも、ひとつ描くとその上をいくことが起こるので、今となっては「赤羽様に描かせていただいている」ような感じです(笑)。これまた恥ずかしい話ですが、連載を始めた時はコミック3巻分くらいのネタしかなかったんです。

丸山 ひとつの街であそこまで描くって、すごいですよね。

清野 描いている最中も、現在進行形で、とんでもないことが次から次へと起こりますからね。

丸山 清野さんは、顔出しはしていませんけど、街を歩いていて声をかけられたりするんですか?

清野 最近増えてきましたけど「清野さんですか?」と聞かれて、「えっ?」「は?」「えええっ!?」って聞き返すと、だいたい大丈夫ですね。

丸山 清野さんって、悪ふざけ好きですよね(笑)。なんでそこまで大胆に悪ふざけできるんですか? 漫画家さんって、一般的に社交性がなく、控えめというイメージがあるんですけど。

清野 基本的には社交性皆無ですよ。会話の間とか超怖いですし、次にどんな話題を振ろうか考えていると、こんがらがって黙っちゃうタイプなんです。でも「一期一会の悪用」と言っているのですが、知らない街なら、どう思われてもいいやと思える。ただ、赤羽は、すごく落ち着きますね。なんせ赤羽の人は独特なので、かえってやりやすい。お酒の席では、なおさらです。

丸山 一期一会の悪用(笑)。ほかの漫画家さんとの交流も、ブログなどを拝見する限りは結構ありますよね。

清野 知人は多いですが、友人は限られています。

丸山 『赤羽』は今までなかったタイプの漫画ですけど、ほかの漫画家さんの目を意識されたりしますか?

清野 一切意識していないですね。

丸山 今のノンフィクションスタイルのルポ漫画がヒットしているからこそのジレンマは、ありますか? ストーリー漫画を描いてみたいとか。

清野 最近ちょっとあるんですよ。デビューした頃はずっと創作のギャグ漫画を描いていたんですけど、赤羽に住み始めてから、目の前で起こる現実の数々が、僕が紙とペンで描く面白いことを、はるかに凌駕しているんですよ。だったら、単純にこの街をそのまま描きたいと思ったのがきっかけなんですけど、最近それがちょっと悔しくなってきまして。赤羽の街の面白さをさらに超えた漫画を描きたいなと思うんですけど、超える自信は今のところ皆無ですね。とりあえず、赤羽のまだ描いていない部分を早く描き尽くしてスッキリしたいです。

丸山 そうしたら赤羽から引っ越すんですか?

清野 ちょっとまだなんとも言えないんですけど、とにかくたまっているネタを描いてスッキリして、次に行きたいですね。やり尽くさないと気持ち悪いので。作家にはいろいろなタイプがいると思います。例えば友人の押切蓮介君みたいに、器用にいろいろなジャンルの仕事をこなせるタイプ。彼の場合は、ちゃんと作品のクオリティも高いんですよ。僕は不器用な人間なので、掛け持ちしたら、天津飯の分身の術理論じゃないですけど、それぞれのスピードとパワーが弱くなってしまうと思うんですよね。赤羽を描いているうちは、赤羽だけに全力投球しようと決めています。『知らない街』は掛け持ちでしたが(笑)。

丸山 ここまで赤羽を推している人って、過去にいませんよね。なぎら健壱さんくらいで(笑)。

清野 林家ペー・パー子さんはずっと赤羽に住んでいて、赤羽絡みの特集が組まれると、必ず出ていますよ。先週、ようやく林家ぺーさんと赤羽のスナックで飲めました。

丸山 そろそろ赤羽利権が、清野さんに転がり込んでくるんじゃないですか?

清野 そういうものには、極力ノータッチでいこうと思っていますので。赤羽の人たちからイラストの依頼が来ても、怖いのでお金は取りませんし。単純に恩返しという意味もありますけど、やっぱりイメージは大切ですからね。ヒヒヒヒ。
(構成=編集部)

●せいの・とおる
1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン)が大ヒット。現在、双葉社の「漫画アクション」にて『ウヒョッ!東京都北区赤羽』を連載中。
Twitter <https://twitter.com/seeeeeeeeeeeeno>

●まるやま・ゆうすけ
1977年生まれ。宮城県仙台市出身。編集者、官能小説家、ゴーストライターなど幅広く活動する傍ら、考古学者崩れの犯罪ジャーナリストとして、著作を執筆。別のペンネーム・丸山ゴンザレスとして海外紀行ものも発表している。主な著作に『アジア罰当たり旅行』『図解裏社会のカラクリ』『悪の境界線』など多数。
Twitter <https://twitter.com/marugon>

最終更新:2013/09/11 18:00
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