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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 「赤羽は、僕の創造力をはるかに凌駕している」赤羽漫画家×犯罪ジャーナリストの異色対談【後編】
全っっっっっ然知らない街でおしゃべりしてみたものの……

「赤羽は、僕の創造力をはるかに凌駕している」赤羽漫画家×犯罪ジャーナリストの異色対談【後編】

■清野流・スナック攻略法

丸山 スナック攻略のツボって、例えばどんなものがあるんですか?

清野 企業秘密なので、全部は話せませんけど(笑)。例えば入店時、いきなりドアを開けるのではなく、入る前に耳を澄ませて、中の様子をうかがうんです。カラオケで盛り上がっている店は、歌っている最中は人と話せないのでなるべく避けますね。入るとしても、歌が終わってから。ママは、そういうところを見ているんです。座る位置もママに聞いて、最初はおとなしく飲むんですけど、常連が歌い始めたら飲むのをやめて、歌っている人のほうに姿勢ごと向けるんです。間奏の時は拍手して終わったあと「うまいっすね~」とか言うと、まずその常連は味方になってくれる。あと、なるべくトイレから離れた席に座って、トイレに行く時はママに一言「トイレお借りしてもいいですか?」と聞いて、お客さんの後ろの狭い空間を通る時は「ちょっと後ろ失礼しますね」とか言って、さりげなく肩にボディタッチしたり。あと、これは僕のジンクスなんですけど、トイレを掃除するんですよ。

丸山 トイレ掃除を?(笑)

清野 お店によっては、お客さんがトイレに行くたびに掃除をするママもいるんです。トイレットペーパーを三角折りにして、前のお客さんが汚したところを僕が掃除したあとにママがトイレ掃除に行ったら、もうこっちのものですね。さらに「営業時間は何時までですか?」「休みは何曜日ですか?」と聞いたりすると、好感を持たせることができる。

丸山 すごいノウハウですね。しかも、かなり蓄積されている。スナックは自分の嗅覚で選ぶんですか?

清野 自分の嗅覚だけです。

丸山 それだけスナックに行っていたら、ママさんと仲良くなってしっぽり……みたいなこともありそうですけど。

清野 僕の場合、そこには重点を置いていないんですよ。どちらかというと、面白い客に重点を置いているので。基本観察ですよ。

丸山 清野さんと同年代、もしくはもっと若い奴がふらっと来ることもあるんですか?

清野 たまにいるんですよ、物好きの手だれが。『知らない街』の中でも描いたんですが、久留里という街に行った時にも出会いましたね。おじさんしかいない場末の居酒屋にいきなり入ってきて、すぐカウンターに座って自然に溶け込んでいるんですよ。そこからはもう、僕と彼との戦いです。どちらが先にこの店を落とせるか、みたいな感じで。全力でトイレも掃除して、結局僕のほうがママからお土産をたくさんもらいましたからね。

丸山 「店を落とす」って(笑)。

清野 客のおじさんも若者には名刺を渡さなかったけど、僕にはくれましたから。「どうだ参ったか! 赤羽だぞ、こっちは!」と思いましたね。

丸山 やりますね、清野さん(笑)。

清野 名刺は戦利品なんですよ。「名刺=私は、あなたに心を許しましたよ」という証しじゃないですか。集めた名刺を家に持ち帰って、ニヤニヤしながら飲むんです(笑)。今後もこの人とは広がりそうだな、面白そうだなという人の名刺は取っておきますね。次に会った時のために、名刺の裏に覚えている限りのパーソナルデータを書いておく。常連客を落とす一番の基本は、名前を覚えておくことなんです。再会した時に「○○さん、この間はありがとうございました。勉強させてもらいました」と下から行くと、仲良くなれる。

丸山 さすがですね。全然コミュ障じゃないじゃないですか。

清野 そういう人に対しては行けるんですけど、普通の同世代の人に対してはコミュ障です。

丸山 ちなみに、そこまで培った「赤羽力」を、取材以外で発揮する場ってないんですか? 清野さんが合コンに行ったら面白そうですけど。

清野 実はどれだけ通用するのか試してみたくて、何度か行ったことありますよ。しかし、スナックや居酒屋で気持ちイイほど通用するテクが一切通用せず、終始しどろもどろで……。

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