「僕は、街に対しては基本ドMなんです」赤羽漫画家×犯罪ジャーナリストの異色対談【前編】
#本 #インタビュー #清野とおる
■どうやって「街」を選ぶのか?
丸山 今回、清野さんが選んだ対談場所が足立区の谷在家ですが、「街選びの基準」ってあるんですか?
清野 僕は、街に対しては基本ドMなんですよね。
丸山 ドM!? どういうことですか?
清野 突拍子もないところへ行って、とんでもない目に遭いたいとか。今回の『知らない街』にも収録されているんですが、せっかくの休みに北海道の発寒中央(はっさむちゅうおう)なんて絶対に行きたくなかったんです。だけど、飛行機が遅れまくっていたりとか、ひどい目に遭うとゾワゾワするんですよね。
丸山 トラブルに燃えるタイプですね。私も同じ性質なので、よくわかります。ちなみに海外には行かないんですか?
清野 海外は怖いんですよ。都市伝説であるじゃないですか、「だるま女」とか。あとは映画の『ホステル』みたいな、猟奇的な事件に巻き込まれるイメージしかないから……。
丸山 悪夢と自分の状況がつながってしまうんですね……考えすぎだと思いますけど(笑)。
清野 でも、そう考えてしまうんです。いまだにパスポート持っていませんもの。
丸山 編集の方が、勝手にパスポート作って清野さんを連れ去ったら面白いと思いますよ。
清野 それでも絶対に行きたくないですね。人って結構とんでもない刺激を求めたり、価値観を変えるために海外とか宇宙とかに行こうとするじゃないですか。そうではなくて、本当にとんでもないことは、そのへんの薄暗い路地を曲がった先とかにあったりすると思うんですよね、意外と。そういう身近な部分を見過ごして、海外に行く人とかが多いと思う。
丸山 私は「より遠くに、より危険なところに」という意識がすごく強かったのですが、そんな時に『赤羽』を読んで「こういうこともあるんだ」と思って衝撃を受けた記憶がありますね。
清野 僕の場合は、たまたま赤羽に住んでいたから、そういうことに気づけたんだと思います。
丸山 清野さんは、東京生まれ東京育ちですよね。インタビューで「自分のプロフィールは明かさない」とおっしゃっていたのを読んだような覚えがあるのですが。
清野 いや、結構明かしていますよ。顔はあんま出していないですけど。ウィキペディアにも出身地や年齢が出ていますが、隠しているわけではないです。
丸山 東京生まれ東京育ちなのに、東京で知らない街があるんですか?
清野 まだまだたくさんあります。
丸山 私は地方出身者ですし、皇居の東側にはあまり行ったことがなくて東京の知識がすごく偏っているんですけど、清野さんにとっての東京ってどこらへんなんですか?
清野 僕は板橋区と北区だけですね。あとは何も知らないです。出かけることもありますけど、せいぜい新宿、池袋、渋谷とか大きい街ぐらいで、そこに至るまでの細々とした街はちゃんと歩いたこともないですし。
丸山 例えば雑司が谷なんて、池袋と高田馬場という誰もが知っている地名の間にありますが、実際に歩いたことがある人は少ないですよね。
清野 そういう、エアポケット的なところが一番好きなんですよ。
(後編に続く/構成=編集部)
●せいの・とおる
1980年生まれ。東京都板橋区出身。地元・赤羽に生息する奇妙な人々を生き生きと描いた漫画『東京都北区赤羽』(Bbmfマガジン)が大ヒット。現在、双葉社の「漫画アクション」にて『ウヒョッ!東京都北区赤羽』を連載中。
Twitter <https://twitter.com/seeeeeeeeeeeeno>
●まるやま・ゆうすけ
1977年生まれ。宮城県仙台市出身。編集者、官能小説家、ゴーストライターなど幅広く活動する傍ら、考古学者崩れの犯罪ジャーナリストとして、著作を執筆。別のペンネーム・丸山ゴンザレスとして海外紀行ものも発表している。主な著作に『アジア罰当たり旅行』『図解裏社会のカラクリ』『悪の境界線』など多数。
Twitter <https://twitter.com/marugon>
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