宮藤官九郎の売名行為!?『あまちゃん』は震災をどう描いたのか
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地震や津波の被害はジオラマによって表現された。ドラマ開始当初から何度となく登場し、観光協会長・菅原(吹越満)の道楽のように扱われてきたあのジオラマだ。そしてトンネルで急停止し、辛くも難を逃れた北鉄の車両から、外の状況を見ようと歩き出した大吉が気持ちを鼓舞して歌ったのもまた、小ネタとして何度も歌われた「ゴーストバスターズ」だ。
一方、東京では、被害状況を映すテレビ画面に見入りながら、気持ちが追いついていないアキたち。そこに豚汁を差し入れする安部(片桐はいり)に「なんか今は、まめぶ食べて文句言いたかった」「安部ちゃんといえば、まめぶだもんね! ドラえもんの、どら焼きみたいなもんたい!」とGMTのメンバーが言うと「まめぶはポケットには入りません!」と安部がちょっと的外れなツッコミを入れ、ようやくみんなに笑顔が戻る。
「ジオラマ」「ゴーストバスターズ」「まめぶ」。これまで小ネタでしかなかったものが、一転して大きな意味を持つ。非日常の中にも日常は潜んでいる。それが、かけがえのない救いになったのだ。
北三陸の住民の安否は「みんな無事 御すんぱいねぐ(ご心配なく)」という祖母の夏(宮本信子)の短いメールでのみ伝えられた。そして、地震や津波の被害から奇跡的に逃れた北三陸鉄道が「1区間でも1往復でもいい。誰も乗らなくてもいい。運行を再開することが使命だ」と大吉たちの奮闘で震災からわずか5日後に運転を再開させたという、ほぼ実話を基にしたエピソードが挿入される。
しかし、震災後の北三陸の描写は、アキが北三陸に戻るまでの3話(134~136話)の間で、わずか5分足らずのこのシーンだけだった。これまで東京編でも頻繁に北三陸の人々の生活を描写してきたことを考えれば、異様なことだ。それは、東京といわゆる被災地の、あの「断絶」をあえて描かないことで、痛烈に表現していた。
北三陸鉄道を復旧したように、とにかく前へ進むしかないと踏ん張って生きようとする北三陸の人々に対し、東京では迷い立ち止まっている人々の様子が描かれる。
震災発生当初、娯楽は「自粛」を余儀なくされていた。
「娯楽に関わる多くの人が自分自身に問いかけました。ドラマや映画や歌がなくても人は十分生きていける。でも水や食べ物、電気や燃料がないと人は困る。生きられない――」(春子・語り)
鈴鹿はドラマの出演依頼に対し「もちろん出たい! だけど東北の方々に申し訳ない……」と後ろ向き。それに対し、社長の春子は言うのだ。
「東北の人間が『働け』って言ってるんです!」
一方、GMT5マネジャーの水口(松田龍平)が懇願し、プロデューサー太巻が「恩売るだけだぞ。お前に対する“売名行為”だ」と承諾して実現したアキとGMT5のテレビ収録。そこで「地元に帰ろう」を歌ったのを最後に、アキは北三陸へ帰ることを決意した。
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