トップ企業の爆弾──トラブル続きのジリ貧ドコモが悩むスマホ対応遅れ
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6日、ついにドコモが今秋にもiPhoneを発売する見通しになったとマスコミ各社が一斉に報道し、iPhoneを待ちわびていた向きからは「やっとか!」と期待が膨らむ声も聞かれました。しかし、一転してドコモは「決定した事実はございません」とコメントを発表し、ドコモユーザーは情報に踊らされ溜め息。はたして、ドコモからiPhoneが発売される日は本当にくるのか…。
サイゾーでも過去に、ドコモの対応の遅れに関して指摘していました。ここでは、ドコモがなぜスマホ対応に乗り遅れていったのか、いま一度振り返ってみたいと思います。
■今回のピックアップ記事
『トップ企業の爆弾──トラブル続きのジリ貧ドコモが悩むスマホ対応遅れ』(2012年2月号特集『2012年版経済【秘】白書』より)
──ソフトバンク、auにiPhoneを握られ、シェアトップながらスマホ市場でも先行きの見えないNTTドコモ。焦りのためか、急速な「スマホシフト」移行に社内体制が追いついていないという声もあり、「Xi」(クロッシィ)対応のiPhone5を最終兵器として持ち出してくる可能性も!?
ケータイ業界全体がスマートフォンへと明確に舵を切った2010年。続く11年は、その影響がさまざまなところに表れ、業界そのものが変質しつつあることが明らかになった。その中でシェアトップのNTTドコモ(以下、ドコモ)は、上半期は東日本大震災による被害と復旧対応が大きな負荷となりおとなしかったものの、夏以降は数多くのスマートフォン(以下、スマホ)を発売するなど、存在感を見せつけた。
しかし年末も押し迫った12月、そのドコモを大きなトラブルが襲った。ドコモのスマホからメールを送ると、相手に届いた際に送信元のメールアドレスが他人のものに置き換わるという障害が発生し、約10万ユーザーが影響を受けたのだ。通信サービスの根幹にもかかわる事故の要因に、急増するスマホによるシステム負荷の増大があるとドコモが発表したものの、一部の専門家は「古い電話の常識にとらわれて、スマホの特性を見誤ったドコモのシステム設計ミスだ」と指摘する。
スマホにまつわるドコモのトラブルはこれだけでない。11月には富士通製スマホ「REGZA Phone T-01D」の通話・通信ができない場合があるというトラブルが発売初日に判明し、即日販売を停止するという醜態をさらした。これほど深刻ではないものの、スマホの不具合は頻発しており、不具合を修正するために公開した更新ソフトウェアに再び不具合が見つかり、公開を中止するといったドタバタ劇まであった。
これまでも端末やサービスのトラブルは、ドコモのみならず、他のケータイ事業者やフィーチャーフォンでも起きてきた。しかし今回は、”スマホ版iモード”とも呼ばれるspモードのための新しいシステムや、通話・通信という根本的な機能にかかわるもの。要は、スマホに関しての不具合が多すぎたのだ。こうした事態の背景を、ケータイ関連ニュースサイト「ケータイWatch」の湯野康隆編集長は、「今までのドコモにはなかったミスが続いている。スマホの作り方がフィーチャーフォンとは根本的に変わったことで、機能の検証などが対応し切れていないように見える。何か根本的な問題があるのでは?」と指摘する。
ドコモが抱える問題はまだある。ケータイ市場が飽和しつつある中で、他社ほど積極策を打ち出せずにいるドコモは、ナンバーポータビリティによって他キャリアへ転出するユーザーが、他キャリアから転入してくるユーザーよりも、常に多い状態が続いている。さらにソフトバンクに続いてKDDIまでもがiPhoneを扱い始めたことで、その傾向に拍車が掛かり、3大キャリアの中で「ひとり負け」状態だ。
そのため、起死回生の手段として噂が絶えないのが、「ドコモ版iPhone」の発売。11年12月には日経ビジネスが、12年夏にドコモからLTE対応iPhoneが登場するとすっぱ抜いた。ドコモは即座に否定したものの、業界関係者は「さもありなん」と口をそろえる。なぜなら、過去にもドコモからのiPhone発売は噂されてきたからだ。日本で最初にiPhone 3が発売された際も、直前まで業界内では「ドコモから発売される」と決まったかのように語られていたし、iPadの際も同様だった。しかし実際には実現しなかった要因として、ソフトバンク側のアップルへの強い働きかけだけでなく、日本の端末メーカーと二人三脚で来たドコモが、iPhone優遇を求めるアップルの条件をのむわけにはいかない、という事情もあったといわれている。
しかし、今回の噂は、ドコモのLTEサービス「Xi」(クロッシィ)に対応したiPhoneに関するもののため、少々事情が異なってくる。なぜならば、Xiはまだエリアが狭くユーザー数が少ないため、国内メーカーとの競合が小さくて済む。しかも、Xi向け料金プランはFOMA向けプランよりも、すでに割安になっていることから「アップルだけを優遇する」という形を避けられるのだ。真相はまだ闇の中だが、着々と準備が進んでいても不思議ではないだろう。
仮にドコモ版iPhoneが実現したら決定的になるのが、日本でのアップルの存在感だ。11年も話題の中心だったアップル。11年上半期の国内端末シェアではアップルは5位だが、スマホだけのシェアでは2位となった。しかし、週間販売台数ランキングを追いかけると、11年でiPhone 4/4Sがトップ3に入らなかったのは、わずか4週だけ。さらに、4S発売直前の買い控えとKDDIからの発売も併せれば、11年下半期にアップルがさらにシェアを伸ばしている可能性は高い。12年も、噂通りドコモから新型iPhoneが発売となれば、アップルが名実共に国内ナンバー1となる可能性は小さくない。
それに対抗する国内メーカーはどうだろうか? 各社共スマホへと注力し、さらにガラケーの特徴的な機能であった「おサイフケータイ・ワンセグ・防水」の”三種の神器”をスマホにも投入し、海外メーカーとの差別化を図っている。この「全部入りスマホ」が人気となり、ランキング上位に顔を出している。だが、そうした国産スマホに対しては「(処理速度が追いついておらず)操作がカクカクする」といったネガティブな評判も多く、さらには前述の富士通のようなトラブルも起きている。
国内メーカーにおけるこうしたトラブル多発や各社のスマホ無個性化の要因のひとつが、「ソフトウェアのエンジニアリング能力の問題」だと前出の湯野氏は指摘する。「これだけOSのバージョンアップスピードが速いと、そこにキャッチアップできるかどうかの影響が大きい。いくらハードウェアで頑張ってもどうにもならない」(湯野氏)のだという。
では、国内メーカーはこのまま凋落する一方なのだろうか? 一部メーカーはそれに気づき、手を打ってきている。その代表がシャープだ。
「11年に入ってからシャープは、大幅に組織をいじっているようです。春先からの人事異動をよく見ていると、新しい組織ができているのがわかるので、ソフトウェアに対する考え方が少しずつ変わってきている感じがありますね」(同)
スマホ時代が到来し、キャリアもメーカーも、ソフトウェア分野での技術力における重要度が大幅に上がっている。それは単純な人材や資産の問題だけでなく、企業組織の問題もある。それにいち早く気がつき、対応できた企業が、12年には大きく伸びることになりそうだ。
(文/青山祐輔)
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