「コーヒーを押すと、ミルクティーが出てきた」10年ぶり復活のボキャ天芸人・松本ハウスが語る“統合失調症”のリアル
#お笑い #インタビュー
――普段の加賀谷さんの行動なんかも、ネタに取り入れたりして?
キック 漫才に関しては普通に作り込んだネタでしたけど、フリートークでは加賀谷のおかしな行動をよく話題にしていました。こいつ、「コーヒー買ってきて」っていうと、絶対にミルクティーを持ってくるんですよ。
加賀谷 それがですねぇー、自販機に行ってちゃんとコーヒーのボタンを押したのに、ミルクティーが出てきたんですよ。
キック 出てこないよ!
加賀谷 出てくるんですよぉ~。「この自販機はもうダメだ!」と思って、隣の自販機でコーヒーを押しても、またミルクティーが出てくるんですよぉ。
キック お前がミルクティーのボタンを押してるんだよ!
加賀谷 いや、押してない押してない! 絶対に押してないですッ!
――それは天然で押し間違えてるか、幻覚が見えているか、どっちかですよ。
加賀谷 幻覚ではないと思うんで……自販機がおかしいんだと思いますよ。ベンダーがクラッシュしてるんですよぉ。
キック お前の頭がクラッシュしてるよ!
■ボクの嫌いな「自分」が評価されるという矛盾
――学生時代は「自分は臭いと思われているんじゃないか」と気になるあまりに幻聴が聞こえていたそうですけど、そういう人が自分のことをネタにして笑われる芸人になって大丈夫だったんですか?
加賀谷 「自己臭恐怖」というヤツですね。ずっと「アイツ、臭いよ」という幻聴が聞こえていて悩んでいたんですけど、お笑い芸人として笑われる分には、全く気にならなかったですねぇ。キックさんも「お前、死臭がするよ!」とか突っ込んでくるんですけど、それは平気なんです。お笑いの仕事を17歳で始める前に1年間、グループホームに入っていたんですけど、そこでだいぶ休めて、幻聴を聞くこともなくなっていたというのも大きいかもしれません。
――お笑いを始めた頃は、精神的に調子がよかったんですね。
加賀谷 まあ統合失調症の薬は飲んでましたけど。
キック 時々、遅刻をしたりするくらいで、行動もそこまでおかしくはなかったですしね。
――それから『ボキャブラ天国』でガーンとブレイクしていくわけですが、やはりその忙しさで精神的におかしくなってしまったという部分もあったんでしょうか?
加賀谷 それも一因だったと思います。とにかく小さい頃から、自分自身が嫌いだったんですよ。それなのに、そんな自分がボキャ天ブームで急に評価されるようになっちゃって。ボクの嫌いな「自分」がマスメディアで評価されているという矛盾で、うれしいのと嫌なのとがごちゃ混ぜになって、感情のコントロールができなくなってしまったんです。
――キックさんは、加賀谷さんの症状が悪化していたのには気付かなかったんですか?
キック 単に疲れているのかなって思っていました。ブームのピーク時は、1年半くらい休みがなかったですからね。同じように『ボキャブラ天国』で売れていた人間を見ても、みんな忙しいから疲れてるんですよ。だから、加賀谷が楽屋に入るなりゴローンって床に転がったりしてても、「疲れてるんだろうなぁ~……」って。一応、本番になるとちゃんと仕事をしていたんで、まさか症状が悪化しているとは気付かなかったですね。
――幻聴や幻覚が出るほど症状が悪化しても、キックさんには言い出せなかったんでしょうか?
加賀谷 キックさんはすごく心配してくれちゃうんで、知られたくなかったですねぇ。
キック 病気をこうやって隠そうとするのも、よくないんですけどね。
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