「満島ひかりは一筋縄ではいかない女優」熊切和嘉監督が描く、自由奔放な女の生きざま
#映画 #インタビュー #満島ひかり
30歳を過ぎても結婚に焦ることなく、落ち着き払った独身女性がいたとしたら。人々は陰で思うだろう、「未亡人か離婚したか」「きっと何か理由があるんだよ」と。
『夏の終り』の主人公である相澤知子(満島)は、別れた夫のもとに娘を置いてきた、いわゆるバツイチ。年上の作家の小杉慎吾(小林)と週の半分を一緒に暮らしているが、慎吾は残りの日を本妻のいる自宅で過ごす。知子は慎吾に「奥さんと別れて」などと言わず、このまま穏やかな関係を続けたがる。知子のもうひとりの恋人、木下涼太(綾野)には理解できない関係だ。知子は慎吾を自分のものにしたいと、本当に思っていないのか……。
瀬戸内寂聴の私小説でもある、この不可解な三角関係の物語を、『海炭市叙景』の熊切和嘉監督が映画化。満島ひかり、綾野剛、小林薫という俳優陣を迎え、自由奔放な女性の生きざまを映し出した。観賞した男性には賛否両論だという知子だが、熊切監督はどう受け止めたのだろうか?
――熊切監督が文学的な女性映画を作ったことに、正直驚きました。
熊切和嘉(以下、熊切) そうですね。まさに、女性映画を作ってみたいなと思ったんです。女性映画の基準は人それぞれですけど、女優が真ん中にしっかり立っている映画にしたいと思って撮りました。僕にとっては、成瀬巳喜男監督の高峰秀子映画みたいなイメージです。
――瀬戸内寂聴さんの原作を読んだ時の印象は?
熊切 時代物、文芸物なんてできるのかなと不安に思いつつ読んだんですけど、ヒロインがとにかく面白くて(笑)。思ってたよりずっとはねているし、みっともなさも全開。そこが面白いなと思いました。
――やはり、ヒロインの知子に惹かれましたか?
熊切 僕は、かわいい人だなと思いましたよ。不器用で、正直で。言わなきゃいいのにっていうことを言っちゃったりするところもかわいい。文芸作品のヒロインって、もっとエレガントだったりただ美しい人が多いけど、そういうヒロインに僕はあまり興味がない。でも『夏の終り』は、常識を平気ではみ出しているし、キレイごとじゃない部分も描いている。だから、やりたいと思いましたね。
――知子は妻帯者の慎吾と交際しつつ、さらに若い恋人もいます。
熊切 この作品って、ヒロインの魅力のほかに、この関係性の面白さがある。慎吾は夫かと思いきや、本宅に帰っていくんですからね(笑)。複雑で、緊張感があり、奇妙でもある関係性。そこが面白いと思います。
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