「退屈な二枚目」だらけの少女マンガに現れた、かっこいいゴリラ『俺物語!!』
#マンガ #コミック #女子マンガが読みたくて
どれくらいの人が知っているかわからないが、ここまで顔芸のできる恋愛マンガキャラは『ツルモク独身寮』(窪之内英策)の白鳥沢レイ子以来だと思う。しかも、笑わせた上で泣かせたりもするのだから、本当、おっそろしい作品だ。
だけど、僕が『俺物語!!』を好きで仕方ない理由は、インパクトのすごさや、笑って泣けるストーリーの部分ではない。猛男というキャラクターが、「男といる時のほうが面白い」からだ。
もちろん普通の王子キャラにも男友だちはいるし、友人関係が描かれることも多い。だけど、多くの王子キャラは、女の子たちの目線から切り取られた男の子であるがゆえに、「対女子」でのキャラクターしか見えてこない。物語の中で、恋愛に中心軸を置いているといいかえてもいい。だから、ときとして「退屈な二枚目」になる。
だけど、猛男はモテない。だから、そもそも女子との関係や、恋愛というコミュニティに軸足がなく、男友だちとの関係の中で人間性の本質が描かれている。まだ単行本に収録されていないエピソードでは、猛男が窓から上半身を出して背筋をしていて落下するなんてものもある。マンガ的な過剰さはあるにせよ、いかにもバカな男子らしい姿だ。
男の友情というのは、そういう少しもかっこよくない、バカバカしさにある。剛田猛男というキャラクターは、女の子たちの王子様であるよりも先に、「俺たちの友だち」なのだ。
だから、普段なら少女マンガは「こいつら、かっこいいなー、ちくしょう!」なんて思いながら読んだりするのだけど、『俺物語!!』を読むときは「どうだ、ちくしょう、かっこいいだろ、俺たちの猛男は!!」とちっとも関係ないのに、自分の友だちを自慢するみたいな気持ちになるのだ。
(文=小林聖 <http://nelja.jp/>)
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