東京キー局がシカトした“米軍基地封鎖”の顛末! 地方局によるスクープドキュメント『標的の村』
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沖縄本島北部に広がるヤンバルの森は“東洋のガラパゴス”と呼ばれるほどの独自の生態系と豊かな自然に恵まれた大いなる秘境だ。だが、ヤンバルの森には、ガイドブックには掲載されていないもうひとつの顔がある。米軍がゲリラ戦やサバイバル訓練を行う世界唯一の演習場でもあるという裏の顔だ。シルベスター・スタローン演じる『ランボー』(82)も若き日にヤンバルの森でゲリラ戦の訓練を積んだのだろうか。琉球朝日放送制作のドキュメンタリー映画『標的の村』は、ヤンバルの森の中にある人口160人の小さな集落・東村高江区で暮らす人々を6年間にわたって撮影取材したもの。沖縄の人々が新型輸送機オスプレイを忌み嫌う理由を、沖縄県外の人間にも分かりやすく紐解いていく。
ベトナム戦争で散布された枯葉剤は沖縄でも使われていた──。元米軍海兵隊員が証言する。高江集落を取り囲むように存在する米軍ジャングル訓練場にはベトナム戦争時に“ベトナム村”が造営されていた。ベトナムの山村に模した集落が作られ、そこで行われるゲリラ戦の演習には高江集落の人々が女性や子どもたちも含めて動員された。ベトナム風の民族衣装を着せた高江集落の人々をベトコンに見立て、捕虜となった米兵たちを救出するというシミュレーションが組まれていた。元海兵隊員はベトナム村周辺で枯葉剤を撒き、今も後遺症で苦しんでいるという。「枯れた植物を処理したのは地元の人々。彼らのほうが影響を受けているのではないか」と元海兵隊員は懸念する。
ベトナム村は撤去されたものの、米軍ヘリコプターは高江集落の真上を旋回・低空飛行するのが日常だ。ベトナム村の代わりに、米軍は高江集落を標的物にしてヘリコプターを離着陸させているらしい。死亡事故の多さから“空飛ぶ棺桶”“未亡人製造機”と称される垂直離陸機オスプレイが配備されれば、この集落で安眠することはできなくなる。2007年から高江集落の人々は新しいヘリパッドの建築現場で座り込み運動を始めるが、2008年に日本国から通行妨害の容疑で訴えられてしまう。呼び出された15人の容疑者の中には、現場に一度も行ったことのない7歳の少女も含まれていた。また、交通の便の悪い高江から裁判所まで行き来するのは相当な負担となる。これは反対運動を萎縮させるための“スラップ裁判”と呼ばれるもの。権力を持たない弱者や個人に対し、大企業や自治体が発言封じのために起こす悪質な訴訟だ。15人の容疑者は後に2人だけに絞られるが、これもスラップ裁判の常套手段。反対運動の結束に亀裂を生じさせるのが狙い。高江集落の人々は国を相手にした裁判に振り回されながら、座り込み運動を続けるしかない。「オスプレイ反対」を訴え続ける限り、彼らは日常生活を送ることができない。
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