芸能人クスリ年表付き!法社会学者が見た芸能スキャンダルの裏に潜む”学術的”現代ニッポン犯罪事情
#芸能 #朝青龍 #薬物 #ドラッグ
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今月1日発売の「週刊文春」(文藝春秋)にて「シャブ&飛鳥の衝撃」というセンセーショナルな見出しと共に、歌手CHAGE and ASKAのメンバー飛鳥(55)の薬物中毒疑惑が報じられました。飛鳥氏側の事務所や親族は疑惑を否定しているものの、騒動はとどまる気配がありません。サイゾーでは過去に、薬物使用で逮捕された芸能人などをはじめ、芸能人と犯罪の関係についての論考を掲載。同時に、芸能スキャンダルを通して見えてくる日本の警察・検察の問題点にも言及しています。さらに、2010年までの芸能人おクスリ年表付きでご紹介!
■今回のピックアップ記事
『法社会学者が見た芸能スキャンダルの裏に潜む”学術的”現代ニッポン犯罪事情』
(2010年4月号特集『スキャンダル&ゴシップ白書』より)
朝青龍問題は、なぜ闇に葬り去られずに事件化したのか? なぜ、最近また日本の犯罪件数が減少傾向にあるのか? そのウラにある、共通した日本警察&検察に特有の問題点を、気鋭の法社会学者・河合幹雄が読み解く!
──まず、朝青龍の知人への暴行騒ぎと引退について。引退は当然、との見解が大勢を占める中、以前であればタニマチなどの仲裁でもみ消せたはず、という見方もあります。法社会学者のお立場から、河合先生はどうご覧になりましたか?
河合幹雄(以下、河) どういうケースだともめごとが顕在化するかというのは、法社会学のメインテーマのひとつですから、とても興味深く見ていました。まず、ああいうスキャンダルの裏側を見極める際には、2つの視点が重要になります。ひとつ目は、同様の問題を過去に何度も起こしていて、ついに進退窮まったのか、それとも、その問題一回で挙げられたのか、という点。朝青龍の場合は明らかに前者で、有能な人材だから日本相撲協会としては守りたかったけど、とうとうかばいきれなくなったケースです。逆に、一発で問題化するのは、敵対する何者かによって追い落とされるケースですね。まあ、ハメる相手がそう都合よく人を殴るわけではないので、一般的な追い落としの事由としては、セクハラが最も多用されます。
──2つ目の視点というのは?
河 個人と組織のどちらが標的なのか、という点です。朝青龍のケースでいうと、明らかに、彼を引退させるのが目的ではなく、相撲協会が標的にされていますね。昔から、芸能人やスポーツ選手が酔っ払って人を殴るなんてことは日常茶飯事だし、誰かがきちんと謝りにいって金を積めば、それでもみ消せるはずの話です。ところが、報道によると、朝青龍に殴られたのは、裏社会に通じる人物で、押尾学やのりピー夫妻とも交流があると噂されるいわくつきです。もし暴力団がらみとなると、今回の問題をネタに相撲協会から恒常的に金をせびるという形になる恐れがありますから、相撲協会としては、朝青龍を引退させるなどによって、幕を引くしかなかったと解釈できます。組織のスキャンダルの解決法としては、よくあるパターンです。それに、相手が単なる一般人でないとなれば、相撲界と暴力団の関係を断ち切りたい警察としても、看過できませんからね。
──つまり、朝青龍本人というより、その取り巻きの危機管理能力に問題があった、と。
河 そう。そういう店に彼を連れて行ったこと自体がね。言い換えれば、「もみ消せる店で暴れろ」ということです(笑)。となると、さんざん指摘されている通り、やっぱり高砂親方がダメなんですよ。相撲協会による親方の処分は、2階級降格という厳しいものでしたが、これは、対外的に格好をつけたのではなく、本当の意味での罰だったと見るべきでしょうね。
──では、そうした芸能・スポーツ界のスキャンダルを受け止める社会の側に、何か変化は見られますか?
河 とにかく「寛容性」がなくなってきていますよね。服装の乱れと会見での発言でバッシングされた國母和宏選手の一件もそうですけど。国民の鬱積のはけ口のようになっていて、報道も、服装の乱れも傷害事件も一緒くたに、とにかく誰かを叩こうとする。それから、今も昔も、一般社会では、薬物事件などの犯罪を起こして復帰するのは非常に難しいことですが、少なくともかつての日本には、芸能人だから大目に見る、という風潮がありました。実際、美川憲一や萩原健一などなど、何事もなかったかのように活躍している芸能人はたくさんいますからね【下のコラムを参照】。
──確かに昨今の日本社会では、芸能人と一般人を区別しなくなってきている気がします。
河 芸能・スポーツ界は世間とは別の世界なのだ、と特別視する感覚がなくなってしまったんです。というより、そもそもそういう別世界と対比されるはずの「世間」というもの自体がなくなった、というべきかもしれません。地域コミュニティなどが失われ、つながりのあるのは家族と友達とテレビとネットだけ、という。そうした風潮が、この先どう変わっていくのかはわかりませんが、のりピーが復帰できるかどうかが、それを見極めるひとつのポイントになるでしょうね。
■警察官を増員させるため手を加えられる犯罪件数
──07年の千葉英国人女性殺害事件では、市橋達也容疑者の逃亡を許すという初動捜査ミスがやり玉に挙げられました。そうした警察のスキャンダルに関して、近年、なんらかの傾向は見られますか?
河 確実にいえるのは、”現場”がダメになっている、ということです。ベテランの刑事から、「今の若い刑事はホントに捜査力がない」という話をよく聞かされますけど、腕利きの捜査官を鍛えるシステムが消えてしまったんですよ。その理由は単純で、よくも悪くも、凶悪犯が減ったことによって、修羅場をくぐる経験が不足しているからなんです。警察官を定年まで勤め上げても、市橋容疑者みたいに、必死に戦って逃げるヤツにはまずお目にかかれません。裏を返せば、昔の犯罪者はもっと怖かったとも、日本がより安全な国になったともいえるでしょう。
1999年に起きた桶川ストーカー事件をきっかけに、警察への告訴が受理されやすくなるなどし、刑法犯の認知件数は激増、「治安悪化」が叫ばれることともなったが、検挙件数はほぼ横ばい。その他のデータからも、データ上、治安は決して悪くはなっていないことがわかる。【註】「一般刑法犯」とは、刑法犯全体から自動車運転過失致死傷等を除いたもの。
──一般刑法犯の認知件数の推移【右のグラフを参照】を見ると、1997年から02年まで、年平均約17万件ずつ増えていたのが、そこから逆に09年まで、年平均約16万件ずつ減っています。これも、そうした捜査力の低下が影響しているんでしょうか?
河 いや、これは単に上層部から、「認知件数を減らせ」という指令が出ていて、なるべく事件化せずに処理しているからです。性犯罪の被害者が署へ相談に来ても、告訴と見なさず帰したり、他殺かもしれない事件を、事故や自殺で処理したり。そもそも、00年から02年の間に急激に増えたのも、99年の桶川ストーカー殺人事件を受けて、「被害届けがあればすべて受理せよ」という通達があったからなんですよ。
──そうした命令を出す意図は?
河 直接的には、警察官の増員のためです。増員してもらうために認知件数を増やし、増員の成果が出たと証明するために減らすわけです。実のところ、こうした操作は、どこの国でもやっていることです。ちょっと考えればわかることですけど、捜査力というものは、本来、増員すると直後はかえって低下するはずなんですよ。なぜなら、新人を教えるために人手を割かなければなりませんからね。
──なるほど。もめごとが事件化、スキャンダル化するかどうかには、警察の方針が強くかかわってくるわけですね。
河 そう。いま話題の埼玉と鳥取の連続不審死事件も、警察が把握していながら顕在化せず、週刊誌が書き立てたことによって急展開したのかもしれません。週刊誌に載ったから捕まえたのか、週刊誌に意図的に情報を流したのかはわかりませんが、おそらく後者でしょう。立件できると踏んだ現場の刑事の判断でね。特に、自分を過信している知能犯の場合、報道によって圧力をかけられて余計な行動を取り、それがきっかけで捕まるということもよくあるんです。
──逆に、立件できそうになくて消えていく事件もあるわけですね。
河 ええ。その意味でいま注目しているのが、先月発覚した、ローソンの連結子会社の幹部2人が、150億円を使い込んでいた事件です。史上最高額といえる巨額不正流用事件なのに、新聞各社の扱いはすごく小さくて、踏み込んで書いていたのは「日刊ゲンダイ」ぐらいなんですよ。間違いなくいえるのは、150億円という金額から、個人ベースの事件ではなく、かなりの大物の絡んだ背景がありそうということです。一般的に、こうした事件が問題化せず見逃してもらえるパターンは、その周辺で集められた金が、社会のためになる使われ方をしていて、だからこそ捜査機関にストップがかかるというものです。検察も警察も、ある案件を捜査しようとすると、幹部を通して「そこ、ちょっと待った」とストップがかかる。「コイツはこんないいこともやってるから、オレが身柄を預かる」という、まさに日本の古い村社会のようなシステムがまだ生きているんですね。
──では、昨今の検察の捜査力について感じることは?
河 事情を知る誰もが口を揃えるのが、特捜がオカシイということです。しかし、それだけではありません。検察官とつきあうと、検事正クラス、あるいは法務省の局長、課長級には、バランス感覚に優れた人間的にも素晴らしい人材がいくらでもいる一方で、組織全体としては、公訴時効の廃止など、理解に苦しむ動きが目立ちます。社会学者の立場から、その原因のひとつとして指摘できるのは、検察幹部の大部分が、娘婿になるなどして閨閥のようなものを形成しているとされる点です。腐敗しているといったような低次元のことではなく、どうも内向きの視点で動いているように見えるんです。逆に言えば、日本全体の将来のために、検察が何をしようとしているのか見当がつかないようでは困る、ということですね。
(構成/松島 拡)
河合幹雄(かわい・みきお)
1960年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。京都大学大学院法学研究科博士課程修了。社会学の理論を柱に、比較法学的な実証研究、理論的考察を行う。著書『安全神話崩壊のパラドックス』(岩波書店、04年)では、「治安悪化」が誤りであることを指摘して話題となった。その他、『終身刑の死角』(洋泉社新書y、09年)など、多数の著書がある。
【表現者だからしょうがない!?】
■芸能人おクスリ年表
77年 岩城滉一:覚せい剤取締法違反、懲役1年・執行猶予3年
井上陽水:大麻取締法違反、懲役8カ月・執行猶予2年
78年 勝新太郎:アヘン法違反、書類送検
83年 萩原健一:大麻取締法違反、懲役1年・執行猶予3年
清水健太郎:大麻取締法違反、起訴猶予
84年 美川憲一:大麻取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
86年 清水健太郎(2度目):大麻取締法違反、懲役1年・執行猶予4年
88年 尾崎豊:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
89年 今井寿(BUCK-TICK):麻薬取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年
90年 勝新太郎:ハワイ・ホノルル空港でマリファナ・コカイン所持、罰金1000ドル・国外退去
91年 勝新太郎:大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予4年
92年 ミッキー吉野(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月、執行猶予3年
93年 江夏豊:覚せい剤取締法違反、懲役2年4カ月
94年 清水健太郎(3度目):覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役1年6カ月
95年 長渕剛:大麻取締法違反、起訴猶予
97年 sakura(元L’Arc〜en〜Ciel):覚せい剤取締法違反、懲役2年・執行猶予3年
01年 いしだ壱成:大麻取締法・覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
田代まさし:覚せい剤取締違反法、懲役2年・執行猶予3年
02年 西川隆宏(元DREAMS COME TRUE): 覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
03年 中島らも:大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法違反、懲役10カ月・執行猶予3年
岡村靖幸:覚せい剤取締法違反、懲役2年・執行猶予3年
04年 清水健太郎(4度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年4カ月
田代まさし(2度目):覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役3年6カ月
05年 岡村靖幸(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月
岡崎聡子(4度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年6カ月
06年 大森隆志(元サザンオールスターズ) :覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予4年
西川隆宏(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月
07年 赤坂晃(元光GENJI):覚せい剤取締法違反、懲役1年 6カ月・執行猶予3年
嶽本野ばら:大麻取締法違反、懲役8カ月・執行猶予3年
08年 岡村靖幸(3度目):覚せい剤取締法違反、懲役2年
加勢大周:覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役2年6カ月・執行猶予3年
倖田梨紗:覚せい剤取締法・大麻取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
09年 小向美奈子:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
倖田梨紗(2度目):覚せい剤取締法違反、懲役1年4カ月
岡崎聡子(5度目):覚せい剤取締法違反、懲役3年
鈴木茂(元はっぴいえんど):大麻取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年
押尾学:麻薬及び向精神薬取締法違反
酒井法子:覚せい剤取締法違反、懲役1年6カ月・執行猶予3年
成田昭次(元男闘呼組):大麻取締法違反、懲役6カ月・執行猶予3年
赤坂晃(2度目):覚せい剤取締法違反
10年 YOU THE ROCK★:大麻取締法違反
中村耕一(JAYWALK):覚せい剤取締法違反
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