「深海生物はギャンブル!?」“海の手配師”が語る、深海生物の魅力と気になるお値段
#本 #インタビュー
NHKスペシャルで『世界初撮影!深海の超巨大イカ』が放送されて以来、にわかに注目を集めている深海。国立科学博物館では『深海展』が開催され、夏休みを迎えた子どもたちを中心に、ひっきりなしに訪れる来館者であふれている。
この、深海の魅力に取り憑かれている男が石垣幸二。15年あまりにわたって深海生物を追い続け、“海の手配師”として各地の水族館に生物を納入する。さらに、手配だけに飽き足らず、2011年には静岡県沼津市に「沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム」の館長に就任し、日々深海生物の魅力を来館者に語り続けている。
先日、『深海生物―奇妙で楽しいいきもの』(笠倉出版社)を刊行した石垣氏に、奇妙で、グロくて、美しい深海生物たちの魅力をタップリと語ってもらった!
――今年1月にNHKスペシャルで『世界初撮影!深海の超巨大イカ』が放送され、16.8%の高視聴率を記録しました。以来、“深海ブーム”ともいえる状況となっています。この現象について、石垣さんはどう思っていますか?
石垣幸二(以下、石垣) 実は、5~6年前から深海生物の映像を撮りたいという依頼が、テレビ局を中心に増えていました。ここ数年、それが徐々に広がりを見せてきた。そうして沸々と湧き起こっていた深海に対する注目が、一気に爆発したのがダイオウイカの番組です。だから、突然ブームになったわけではなく、ダイオウイカが後押しをしてくれたんですね。
放送後から、「沼津港深海水族館」の入場者数も一気に伸び始めました。水族館は今年で開業から2年目を迎えます。普通、オープンの翌年は初年度の7割いけばいいと言われていますが、この7月は初年度の120%。完全にあやかっていますね(笑)。
――景気がいいですね。
石垣 ただ、現在がブームのピークだとは考えていません。あくまでも、ダイオウイカは深海に対する興味の扉を開いただけ。ここからすごいことになっていくと思いますよ。
――石垣さんは、深海生物を15年以上にわたって追いかけています。一体、どこに魅力を感じているのでしょうか?
石垣 一番の魅力は、そのわからなさです。ほとんどの深海生物の生態は未知の状態ですから、飼育方法も確立されていません。何を食べるのか、水温は何度か、照度は……全部やってみないとわからない。だからこそ、興味をそそられるんです。
――外見上も、グロテスクなものや美しいものなど、海の表層部分に生きる生物とはまた違ったユニークなものばかりですね。
石垣 深海は、表層とは環境がぜんぜん違います。水深1000mは、赤道直下でも北極海でも、世界中どこへ行っても水温3℃程度です。また、光が届かないので植物性プランクトンが発生しません。植物プランクトンや動物プランクトンの糞や死骸がマリンスノーとなり、深海生物の重要な栄養源になる。食物連鎖の仕組みが違うんです。
深海に届くわずかな光を捉えるため、キンメダイのようにとても大きな目になったり、オキナエビのように目を退化させてしまう生物もいます。また、水圧から体を守るために硬いうろこで身を守ったり、逆にうろこを持たずにフニャフニャの体を持つことによって水圧を受け流す生物もいますね。
――深海には、発光する生物も多いですね。
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