日刊サイゾー トップ > その他  > フジロック好きは、なぜ大金を払って「泥んこプレイ」に興じるのか?

フジロック好きは、なぜ大金を払って「泥んこプレイ」に興じるのか?

 フジロッカーズ、という言い方が象徴している。純粋な音楽ファンと純粋なフェス好きはイコールではないし、音楽に賭ける情熱でいえばフジに集まる30〜50代よりも若者のほうが遥かに真剣だろう。毎年参加が基本のフジロッカーズは、音楽というよりフジが好き。スマッシュ日高氏が立ち上げたコンセプトが好きなのだ。それは不便という贅沢。もっといえばクソ高いカネを払って雨に打たれ泥だらけになって笑いあう、はたから見ればバカみたいな高級プレイである。ファッショナブルでも何でもないことが「逆に、ラグジュアリー」というか。

 夏の休暇は沖縄かハワイかバリ、そんなふうに『じゃらん』や『CREA』が特集を組むなかで、あえて「電車とバスで4時間、最後は一時間歩いて辿り着く秘境温泉」とか「テレビも電気もない、ただ静寂を楽しむ古民家の宿」みたいな旅行を好む人間は一定数いるものだ。雑誌でいうなら『一個人』みたいな。ものすごく雑な例え方をしているのは承知だが、現在のフジロックと他のフェスにはそれくらいの距離がある。同じ音楽イベントでも、贅沢、の意味がまるで違うのだ。

 フジロックは今年も平然とフジロックだった。主催者も参加者も、もはや喧嘩すらしない老夫婦のごとくに満面の笑顔を見せ、豪雨になれば皆「よし来た!」とばかりに自慢のゴアテックスを装着する。すばらしき阿吽の呼吸を前にすると、昨今のフェスブーム、フェス批判をわざわざ持ち出す意味はどこにも見当たらない。堅苦しい規制はなく、守られすぎた平和ボケもないが、しかし、この特殊性はなんだろうとあらためて思わされた三日間だった。

20130801ishi3.jpg

自慢のゴアテックス!/Photo:Go Okuda 

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

最終更新:2013/09/13 14:21
12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed