深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.234
ギレルモ監督は“メキシコ生まれの小泉八雲”だ! 異形の神々への深き愛情『パシフィック・リム』
2013/08/01 21:00
#映画 #パンドラ映画館
巨大人型兵器イェガーの中では旧式となる“ジプシー・デンジャー”。『鉄人28号』を思わせる武骨なフォルムが泣かせる!
人類の英知を結集した人工の神さまと異次元からやってきた神さまの使いとの壮絶な戦いを描いたSF大作『パシフィック・リム』。人工の神さまである巨大ロボットは“イェガー”と呼ばれ、外宇宙から訪れた神さまの荒ぶる使いは“KAIJU”と呼ばれる。監督は『ヘルボーイ』(04)、『パンズ・ラビリンス』(06)の鬼才ギレルモ・デル・トロ。メキシコで過ごした少年時代に、日本の特撮映画やロボットアニメを聖書代わりに親しんで育った。どこか愛嬌と日陰ものの悲哀を漂わせる日本の怪獣たちによって映像クリエイターとしての資質を育まれたギレルモ監督が、ハリウッド資本を使って本格的怪獣映画を自分の手で作り上げたのが本作。宮崎駿監督が『風立ちぬ』でミリタリーマニアぶりを存分に発揮しているように、オタク人間が自分の持てるポテンシャルを全開にした本気印の熱気がスクリーンの隅々まで立ち込めている。
日本人が怪獣映画やロボットアニメに登場するキャラクターたちに注ぐ特別な愛情に、ギレルモ監督は大いなるシンパシーを感じている。ギレルモ監督はKAIJUやイェガーが実在するものとして撮影に挑んだ。冒頭、サンフランシスコを壊滅に追い込む巨大KAIJU“アックスヘッド”の暴れっぷりはまるでニュース映像を観ているかのような迫真さに満ちている。子どもの頃、円谷プロの特撮シリーズに夢中になった興奮がまざまざと思い出される。1964年生まれのギレルモ監督はハリウッドに進出した今も少年期の感性を持ち続けているからこそ、人気監督でいられるのだろう。怪獣映画の金字塔『ゴジラ』(54)の魅力を現代に伝える後継者が太平洋の向こう側から現われたことが喜ばしい。
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