ギレルモ監督は“メキシコ生まれの小泉八雲”だ! 異形の神々への深き愛情『パシフィック・リム』
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現在はTPP問題で紛糾する環太平洋諸国だが、ギレルモ監督が描く近未来社会では環太平洋諸国は国境や民族や言葉の壁を越えて一致団結している。太平洋の深海にある異次元の扉を開けてやってくる巨大KAIJUたちを迎え撃つために各国は資材や技術を提供し合い、続々と巨大ロボット・イェガーを製造する。日本製の第1世代機である“コヨーテ・タンゴ”は肩に大きなキャノン砲が取り付けられており、『機動戦士ガンダム』に登場する名脇役・ガンキャノンを彷彿させる。中国の3つ子のタン兄弟が操縦する“クリムゾン・タイフーン”は3本腕を活かしたカンフー殺法が自慢。オーストラリアのハンセン親子が搭乗する“ストライカー・エウレカ”は胸に6連発のロケットランチャーを備えた最新鋭機。ロシアのカイダノフスキー夫妻が操る“チェルノ・アルファ”はずんぐりむっくりした動く巨大な壁だ。そして主人公機となるのが米国製の“ジプシー・デンジャー”。主人公機ながら『新世紀エヴァンゲリオン』のような洗練されたスマートさはなく、横山光輝原作の『鉄人28号』を思わせる武骨さでどっしりと構えている。必殺技が『マジンガーZ』のロケットパンチならぬエルボーロケットというのも泣かせる。“神は細部に宿る”と言われるが、ギレルモ監督は各ロボットの細かい造型や武器のひとつひとつに惜しみなく愛情を注いでいる。
高さが70~80mある巨大ロボット・イェガーは、1人で操縦するにはパイロットへの負荷が大きすぎるため、2人で操縦するのが基本。それぞれが右脳左脳を受け持つ形でイェガーを操る。イェガーを自在に動かすためには、2人のパイロットが心をひとつにする“ドリフト”と呼ばれるプロセスが必要となる。パイロット同士の心の結びつきが深ければ深いほど、イェガーはパワーを発揮できる。ジプシー・デンジャーのパイロットであるローリー(チャーリー・ハナム)は長年のパートナーだった兄を戦闘で失い、後任パイロットに日本人女性のマコ(菊地凛子)を選ぶ。出会って間もないローリーとマコだが、共にKAIJUに家族を奪われたというトラウマを抱える。KAIJUとの戦いは自分自身の内面との戦いであり、また新しいパートナーと心を丸裸にして付き合えるかという課題も乗り越えなくてはならない。多分、ギレルモ監督にとっては、自分が怪獣やロボットたちに抱く愛情を、他のスタッフやキャストたちとどれだけ分かち合うことができるかが今回のプロジェクトの大きなテーマだったのだろう。
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