文房具の限界に挑んだ、偉大なる恐竜「多面式筆箱」今昔物語
#サブカルチャー #バック・トゥ・ザ・80'S
■今もなお生き続ける、サンスター文具魂とその後継者
しかし、サンスター文具の多機能、そしてコンパクトに収納するアイデア文具への情熱は今も衰えてはいない。その代表格が、「スティッキール」シリーズだ。一見、リップクリームケースのように見える円筒が、一瞬にしてハサミ、ホチキスなどの文房具に変形! もちろん余ったスペースはホチキスの針を入れることができるといった具合に、「空いたスペースは、とりあえず収納スペースに」というサンスター文具魂もしっかり息づいている。
「サンスター文具には、なんでもやっちゃおうという気風がありますね。アーム筆箱を出した時も『壊れない筆箱なんて出したら、買い替え需要がなくなるんじゃないか』という声もあったけど、伊藤(幸信・元サンスター文具社長)が創業者を説得して『そんなにいいものなら、売り上げが減っても構わないから作りなさい』とゴーサインをもらって商品化しました。そういった意味では、今出しているアイデア文具も、売れるかどうかはやってみないとわからない。失敗しないと成功もありえませんしね。ただ失敗が続きすぎると給料に影響があるから、そこはバランスを取ってね(笑)」
山本氏は笑いながら語る。その顔は文房具を愛し、ありったけのアイデアと情熱を注ぐプロフェッショナルのそれだ。
最後に山本氏は80年代を、「文房具に夢があった最後の時代だったのでは?」と当時を振り返った。いやいや、サンスター文具は現在も夢いっぱいのアイデア文具を日夜開発しているではないですか。この勢いで、21世紀の技術を投入した新世代の多面式筆箱を作ったらどうなるんだろう……? そんなふうに、サンスター文具は今も我々に文房具への夢を抱かせてくれる。
なお、サンスター文具魂の詰まったアイデア文具「スティッキール」最新作のルーペは、8月下旬発売予定。一見化粧品のようなデザインだけど、実はルーペなんです。なんて、おしゃれなギミックを仕込むあたり、さすがである。
(取材・文=有田シュン)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事