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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > マガジン『聾の形』制作秘話

あの衝撃作が帰ってくる! 聴覚障害者へのいじめを描いた『聾の形』制作秘話

IMG_4505_.jpg大今良時氏

■身近な存在だった障害者たち

──お母様が手話通訳士だそうですが、聴覚障害者の方は身近な存在だったんですか?

大今 はい、身近でしたね。実家に居ながら描ける漫画ということで、こういうテーマを選んだ部分はあります。母から手話を教わったり、身近にいた障害者の方がいじめられていたという話を聞く機会もあったので、どちらかというと自然にこの物語が生まれました。

──ここ最近の大津市の問題に限らず、定期的にいじめに関するニュースがメディアに出たりもしますが、そういう世間のムードとは関係はなく?

大今 はい。特に私がいじめられていたとか、ニュースを聞いて……というわけではないです。(少し考えて)……ただ障害者の人生、障害者の位置とはなんなのかということは常に考えているんですが、まだ答えが出ていません。この作品の中だと、ヒロイン・西宮硝子の位置ですね。彼女は主人公・石田にとって未知の存在で遠い存在だから、いじめが起こる。点と点を結ぶ話にしたかったのですが、そのためにはニ人は憎み合っていないといけなかったんです。その先にある硝子の位置は、これから探していくことになります。

──その憎み合った結果である「健常者による聴覚障害者へのいじめ」「いじめの連鎖」という、かなり際どいテーマに、読者のみならず編集部も大きな衝撃を受けたと聞いています。

大今 そう……なんですかね(笑)。現実味とファンタジーのバランスが難しいですね。現実的すぎるという反響も、ファンタジーすぎるという反響も両方いただきました。今も悩みながら描いています。ただ、漫画のために障害者の側からだけでものを言うと、それはそれで考え方が極端になるというか。だから中立的な立場で作品は見てもらいたい、という気持ちはあります。

──確かに聴覚障害者であるヒロイン・硝子を使って、もっと読者を泣かせる展開にすることもできたと思うのですが、そこはあまり彼女に感情移入しすぎないような構成になっているように感じました。

大今 そうですね。私も、彼女のことをよくわかんない子だと思って描いているんです。やっぱり硝子って主人公にとって何者なのかわからない存在なので、そこを意識して描かないといけないのかなって。知らない存在に対して、どう接していくのかっていう象徴(が硝子)だと思います。

──そのほかに印象的だったのが、教師のリアルな「大人のズルさ、汚さ」でした。

大今 私はこの先生、好きですよ(笑)。完全に作者目線になってしまうんですけど、最後に主人公をボコボコにしてくれるシーンは特に。貴重な配役を担ってくれています。……そして同時に、昔、先生たちはあんな感じだったなって。それを自分で描けるのがうれしくて。

──もしかしたら、漫画執筆を通じて、過去の出来事に復讐するというような気分も……。

大今 あるかもしれませんね(笑)。時々、ストレス発散するために漫画を描いているんじゃないか、という錯覚を覚えることもありますね(笑)。

──漫画を描いている瞬間って気持ちいいですか?

大今 気持ちいいです。よく言われることですが、一番気持ちいいのは、主人公が痛めつけられる瞬間かもしれません。あと、肩書とは真逆の精神を持った大人、あるべき姿と違うことをする大人を描くのが好きです。子どもって失敗しても言い訳ができちゃうんですけど、大人ってあんまり言い訳ができない。その過酷さやかっこ悪さが、すごくいいですね。だからこそ描きやすいというか(笑)。

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