科学者の情熱が生み出した狂気の発明の数々! 兵器開発の封印された黒歴史『陸軍登戸研究所』
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本作のプロデュースから編集、撮影、ナレーションまで手掛けたのは楠山忠之監督。現在は「登戸研究所資料館」が建てられた明治大学生田キャンパスに近い日本映画学校(現・日本映画大学)の講師を務めていた楠山監督は、授業の一環として生徒たちと一緒に登戸研究所について調べ始め、それが企画の始まりとなった。
楠山「僕が個人的に興味のある題材だったんですが、戦争を知らない若い学生たちを巻き込んだほうがより面白いだろうと思ったんです。生徒たちと取材撮影を始めたものの、取材に時間を要し、6年がかりの作品になってしまった(苦笑)。当時はまだ明治大学生田キャンパス内に『登戸研究所資料館』が建設されることが決まっておらず、キャンパス内で撮影するのにも映画学校の校長の認印が必要だったりするなどの煩わしさがありました。各地を取材して証言を求めた方たちは、取材拒否された方も含めて約40名。取材拒否された方は5名ほどでしたが、本人は研究所のことを話したがっているのに、子どもに反対されてNGになるケースが多かったんです」
戦争と科学者、技術者との関係について楠山監督はこう語る。
楠山 「ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルも、原子力の軍事利用をルーズベルト大統領に促したアルベルト・アインシュタインも、自分の研究や行為によって戦争で多くの人たちが犠牲になったことを悔いたわけです。日本人初のノーベル賞を受賞した物理学者の湯川秀樹は、正力松太郎が原子力委員会を立ち上げた際に参加を求められましたが、『慎重な上にも慎重でなくてはならない』と身を引いています。科学者は自分の研究に没頭することを望みますが、自分の研究が社会に対してどのような影響をもたらすのかを考えることも大切です。それは科学者だけでなく、どの仕事でも同じでしょう。自分はなぜこの仕事をしているのか、自分自身に問い掛けることが大事なんじゃないですか。目先の幸せや自分たちの生活の安定だけを求めていると、恐ろしい結果が待っていることは登戸研究所が充分に証明していると思いますよ」
『陸軍登戸研究所』は決して遠い過去の日本を扱ったものではない。これからの社会について考えさせるドキュメンタリー映画だ。宮崎駿監督もベネチア映画祭に行く前にぜひ本作を観てほしい。
(取材・文=長野辰次)
『陸軍登戸研究所』
プロデューサー・監督・編集/楠山忠之 撮影/新井愁一、長倉徳生、鈴木麻耶、楠山忠之 録音/渡辺蕗子 編集技術/長倉徳生 朗読/石原たみ 聞き手/石原たみ、渡辺蕗子、宮永和子、楠山忠之 ナレーション/楠山忠之 ムックリ演奏/宇佐照代
配給/オリオフィルムズ 8月17日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開 (c)陸軍登戸研究所 <http://www.rikugun-noborito.com>
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