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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.233

マッチョ信仰を過激に凌駕する“人体改造”願望! 香港カンフーリミックス『アイアン・フィスト』

ironfist03.jpg娼館を営むマダム・ブロッサム(ルーシー・リュー)。「男はセックスで骨抜きにして、寝首を掻いてしまえ」という恐ろしいサディスト。

 両腕に鉄製義手をハメたブラックスミスと特異体質の巨人・金剛が一騎打ちするクライマックスは、数ある香港アクション映画の中でも名作カルトの誉れが高い『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』(75)ばりの大迫力。『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』は隻腕の武術家と盲目の暗殺者が骨肉の争いを演じた。障害者同士、マイノリティー同士の対決が現代に甦る。特異体質の金剛は母国ではまともに暮らすことができず、自分を必要としてくれる異国へと流れ着いたのだろう。スミスも故郷の喪失者であり、両腕を失ったことで逆に胸の奥底に封印していた闘争心を覚醒させることになる。異能者同士の血戦は見せ物感たっぷりだが、そこには健常者が身障者に抱く畏敬の念が込められている。パラリンピックの車いすマラソンや車いすラグビーに出場する選手たちのケタ外れの身体能力と精神力の強さに健常者が恐れおののくように。健常者が語りえない特殊な肉体言語のドラマが紡がれていく。

 これだけ様々な作品の要素をブレンドすると消化不良に陥るところだが、ヒップホップ界で活躍するRZAは音楽だけでなく映像的なリミックス感覚にも優れているようだ。カンフー映画へのオマージュを前面に押し出しつつ、オリジナル性のある新しいアクションエンターテイメントにまとめ上げた。多種多様なB級映画のギミックを組み合わせた『アイアン・フィスト』は、言うなれば“フランケンシュタインの怪物”だ。この継ぎはぎだらけの怪物に生命を吹き込むのは、映画評論家でも興収ランキングでもない。RZAのリミックスセンスとアナタの中に眠る人体改造願望が触れ合ったとき、スクリーンの中に最強戦士が誕生する。
(文=長野辰次)

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『アイアン・フィスト』
監督・音楽・脚本/RZA 共同脚本/イーライ・ロス プレゼンツ/クエンティン・タランティーノ 出演/ラッセル・クロウ、RZA、ルーシー・リュー、リック・ユーン、ジェイミー・チャン、カン・リー、デビッド・バウティスタ、バイロン・マン、ダニエル・ウー、パム・グリム、チェン・カンタイ、レオン・カーヤン、リュー・チャーフィー 配給/シンカ R15 8月3日(土)より渋谷シネクイントほか公開 <http://ironfists.jp>
(C)2012 Universal Pictures

◆『パンドラ映画館』過去記事はこちらから

最終更新:2013/08/01 17:11
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