“世界最大のレコード会社”ユニバーサルに「身売り話」が出ているワケ
#音楽
大手通信会社ソフトバンクが、世界最大の音楽会社ユニバーサルミュージックに対し、85億ドル(約8,540億円)で買収提案をしていた――。英フィナンシャルタイムスが18日に報じたニュースが、音楽業界に衝撃を与えている。
ブルームバーグの続報によれば、ユニバーサルミュージックの親会社であるビベンディの取締役会は、ソフトバンクからの打診を受けた直後に提案を拒否した。ビベンディは現在、株価低迷や携帯電話市場での苦境を背景に事業構成の見直しを進めており、ユニバーサルミュージックの売却案も、以前から水面下で取り沙汰されていた模様だ。
「世界的に売り上げを落としているレコード会社ですが、業界トップであるユニバーサルミュージックは昨年、多くの名門レーベルを傘下に持つEMIミュージックのレコード事業を買収したことで、今後の経営体制は万全と見られていました。しかし、今回は親会社が即座に拒否をしたとはいえ、ユニバーサルミュージック売却話が表面化したことで、その経営内容に疑問を投げかける向きも出てきています」(エンタメ業界に詳しい証券関係者)
現在の音楽業界では、新作音源のセールスが低迷しているため、過去の音源をいかに再利用するかが各社の経営のカギを握ると言われている。その点、多くのレーベルや音楽出版部門を有するEMIミュージックは“宝の山”とされたが、ユニバーサルミュージックの市場寡占化を懸念するEUの圧力もあり、2次使用の権利を扱う音楽出版部門はソニーに売却された。
さらに、ユニバーサルミュージックが一旦買収した各レーベルについても、EUの要請に応じる形で一部売却計画を進めている。そんな中、売上高に占める新作音源の割合が高まっていることが、世界的な音楽産業の退潮とも相まって、ユニバーサルミュージックの成長性に対する懸念へとつながっているようだ。
「ユニバーサルミュージックへの経営懸念は、傘下のゲーム会社の経営不振と並んで、ビベンディの株価低迷の原因となっています。一方、ソフトバンクのような通信会社が豊富な音源資産を活用してシナジーを出すという計画は、投資家にとって魅力的に映るのも事実。音楽産業単体では成長が見込めない、というのが市場のコンセンサスですね」(前出の証券関係者)
世界最大のレコード会社を襲った身売り騒動。現時点では実現していないとはいえ、音楽業界の苦境を象徴する一例といえそうだ。
(文=柴田勇気)
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