「発禁になる前に読んでおけ!」底辺で生きるホームレスを14年追いかけたルポ漫画『ホームレス大博覧会』
――取材時は、ホームレスを取材していると明かすんですか? それとも身分を隠して?
らむ 最初は上野公園に行って一人ずつ話しかけていったんですが、正直ハードルはかなり高かったですね。慣れてくると、いろいろなパターンを使い分けるようになりました。今回の『ホームレス大博覧会』では、取材だと伝えて話を聞くのが大半でしたが、時には「ボランティアです」と言ったり、相手から聞かれるまで何も言わないこともあります。もちろんホームレスに扮装したこともありますよ。若いと目立つので20代の時はなかなか難しかったんですが、40代まで続けていると、かなりナチュラルに取材できるようになります。
この14年の間に、ホームレスのメッカである西成のアングラな飲み屋に潜入して働いたりして、経験を積んできました。ホームレスは、ドヤ街ではヒエラルキーが低いんですよ。酔っ払って怒鳴ってきたりするけど「はぁ?」と言ったら黙るので、意外と牽制できます。
――西成に限らず、どこでも潜入できるものですか?
らむ そうでもないです。関西の方で話を聞くと「関東は怖い」と言いますね。口数は少ないんだけど暴力的。特に同じドヤ街でも、横浜のK町は厳しい。ホームレスの間でも「K町はヤバイ」ってみんな言いますよ。集団でケンカを売ってくるんですよね。
――取材で出会った中で忘れられないホームレスっていますか?
らむ 話を聞いただけの人も含めると、1,000人以上いると思いますが、潜入してホームレスになった時にいろいろ教えてくれた“土方”丸出しの黒いおっさんには、ビクビクしながらもお世話になりましたね。毛布とか貸してくれて最初は汚いなと思ったのですが、夜は本当に冷えて、10月でも寝ていられないんです。本当にお世話になったので、忘れられないですね。
――その人と再会することはあったんですか?
らむ ないです。ホームレスは亡くなってしまうこともあるし、ホームレスをやめてしまうこともあるので。ホームレスを辞めるというのは、家を借りてホームレスじゃなくなるということですが、これが実は結構あって、小泉政権時の政策でマンションを安い値段で貸し出すということをやって、一気に減った時があったんですね。
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