「ショー・ビジネスが、ビジネス・ショーになった」K DUB SHINEが日本の音楽シーンを斬る!
#リアルサウンド
――たとえば、サッカーなどのスポーツだと、18~21歳くらいの若手のレギュラー選手が出てこなくて高齢化してしまうと、停滞してしまう。SHINGO☆西成にしてもANARCHYにしても、30を越えています。それは業界自体が、下から這い上がってこなければ表に出られないから、どうしても遅咲きになってしまうのでしょうか?
K DUB 十分な投資がされていないし、ビジネスとして活性化するような座組み(スキーム)ができていないよね。
――でも、ビジネス化されすぎてしまうと、”ビジネス・ショー”になるというジレンマもある?
K DUB それは、金を出す人による。ひたすら商業的に向かわせるのではなく、ある程度ヒップホップを理解していて、「お前たちのスタイルを貫け」っていうような金の出し方をしてくれればね。この芸能界の中ではパイの大きさは決まっていて、バーニングやジャニーズ、吉本やホリプロら、大手に独占されている。けれど、そのパイもいまやどんどん小さくなっていて、そこに俺たちがバラバラで挑んでも、弾き飛ばされてしまう。どうしてもそこでは音楽業界の中での政治力が必要だよ。
――たとえば、お笑いだと、多くの先駆者が基礎を積み上げ、ダウンタウンが登場し、彼らのスタイルからお笑い芸人を目指す若者が増え、漫才師の価値も上がったと言われています。現在、日本語ラップ、冬の時代といわれていますが、そういったスターが現れれば、変わるのでしょうか?
K DUB まぁ、俺は昔の『THE MANZAI』の影響が、業界的には大きいんじゃないかと思うけどね。スターや優秀な才能が現れたところで、吉本興業に所属していなければ、そこまで大きく売ってもらえない。ダウンタウンが出てくる前にも、(明石家)さんまや(島田)紳助、やすきよ(横山やすし・西川きよし)、(桂)三枝とかもいたわけで、すでに巨大な組織だった。さらに言えばね、日本のメディアは結構な人気があったって、そうでもないことにしちゃう。そういう意味では、個人的にも、やりたい音楽作って、聞きたい奴が聞くっていうのが一番健全な状況でもあるのかな。無理やり火に油を注いでデカくして、よくなるかって言えば、薄っぺらくなる場合もある。今のアメリカメインストリームのような状況になる。最近はどの年代にも、日本全国にヒップホップ好きがいる。彼らが第二第三の波となって、音楽業界に働きかけていけば多少は変わると思いたい。でも、芸能界もしたたかだから、テクニックとかスタイル、ギミックだけをうまく搾取して、商品化して終わるかもしれない。日本の営利組織は、東京電力や日本政府や経団連のルールとどこも同じ気がする。こっちが心血注いで、音源作っても、金払わなきゃ、媒体もろくに取り上げないから、あきらめているというか、とっくに見限ってるよ。くだらねえ。
――”さんぴんcamp”を経て、B-BOY PARKが3万人集まった時代もありました。それが、今では5000人程度しか集まらない。こういった現状になったのは、日本語ラップの作り手の質に問題があったというよりも、吉本興業みたいな強固な組織がなかったことが問題かもしれません。
K DUB 業界の中での立ち居地や体制だろうね。だって、ろくでもない音楽がいっぱい売れてるじゃん! ラップのジャニーズ、ラップの吉本みたいな、ヒップホップに特化したマネジメント会社があれば違うと思う。大手プロダクションがどこかでサポートしないと、厳しいだろうね。業界自体が「お笑いもアイドルもそろそろ限界だな。今の若い年代はヒップホップ聞くし、EXILEみたいなのも相当も売れたし」みたいな感じで、ヒップホップに移行すれば変わるかもしれない。けど、お茶の間でウケるようなもの作れといわれたら終わりだから、それは諸刃の剣だとは思うけどね。
(取材・文=石井紘人[hiphopjournal])
● 『アート・オブ・ラップ』
監督/アイス-T 出演/エミネム、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、カニエ・ウェスト、Run DMC、ナズほか 配給/角川書店
7月27日よりシネマライズほか全国順次公開
(映画『スヌープ・ドッグ/ロード・トゥ・ライオン』と同日公開)
2012(c)The Art Of Rap Films Ltd
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