25年間トップのB’zに漂う、得体のしれない「虚無」
#リアルサウンド
――第一線の音楽ライター/評論家が、最新アルバム・シングルチャートを斬る! 今回のレビュアーは石井恵梨子さんです。
【7月8日付のアルバムランキング】
1位:なんだこれくしょん(きゃりーぱみゅぱみゅ)
2位:Boys Meet U(SHINee)
3位:Produced by Masaharu Fukuyama「Galileo+」(Various Artists)
4位:B’z The Best ⅩⅩⅤ 1988-1998(B’z)
5位:B’z The Best ⅩⅩⅤ 1999-2012(B’z)
6位:SECOND STORY(ClariS)
7位:天晴~オールタイム・ベスト~(さだまさし)
8位:Summer Ballad Covers(May J.)
9位:いいね!(´・ω・`)☆(GReeeeN)
10位:Dawning(9mm Parabellum Bullet)
きゃりぱみゅ1位。韓流2位。続くは福山雅治にB’z。とてもチャートらしいチャートで、妙にホッとする今週。一部で激アツだけど世の中的には誰それ? みたいなのが瞬間的に濫立するのはチャート界の「荒らし」であって、旬の人気と安定株が並んでいると秩序が守られているなぁと思うのだ。唯一の注意点は7位。ジャケはアジカンぽいけど、それ、さだまさし!
安定株代表、B’zは今年で25周年。2枚のベスト盤は先週当然のようにトップだった。人気と比例してアンチもそれなりに多いようで、20年前なら「洋楽のパクリだ!」といきり立つ人々、10年前は「一体誰が聴いてんのかねぇ?」と白けた顔で問う人々を見かけたものだが、今はもう、ただただ続く横綱相撲、終わらないウルトラソウル! ハイッ! と感心する人のほうが多いのではないか。業界全体のセールス不振などはどこ吹く風。一心不乱にB’zという道を邁進する彼ら。それはロック/ポップスの王道とも異なる、何かの極道(きわめみち)であるように思う。
王道のヒット曲。それは曲の良さはもちろん、時代とのマッチング、大衆の共感、そして歌い手自身のキャラクターなど様々な条件が必要だ。そしてヒットメイカーとしてキャリアを積めば、次は表現者としていかに成長するか。ファンは自分自身を重ねあわせ、歌い手と共に人生を歩む幸せな関係性を築けるだろう。たとえ匿名でもGReeeeNの声質には「やんちゃそう、ちょい頭悪そう」なキャラがしっかり宿っているし、時代を意識したタイトルの新作には「あの4人がこんなことを歌うようになるなんて」的な感動があるわけだから。
しかしB’zにはそれがない。25年間ずっとトップというのは単純に驚異だし、ごく初期を除けばイメージが何ひとつ、もう一ミリたりとも変わらないのが本当すごい。目立った活動休止期間もなく仲違いの噂も皆無。人生におけるドラマ(突然売れたことに混乱し、暗黒期をくぐり抜けて再び輝きだすというロックバンド的パターン、あるいは熱愛や破局を経て歌詞の深みが増し、結婚や子供の誕生で「大きな愛」を歌うようになる、などのストーリー)がまったくないのである。常にプロであろうとするストイシズムといえば恰好いいが、彼らの内面に何があるのか、ちっとも見えてこないのが一番すごいと思う。
稲葉浩志が歌うのは、いつだってボンヤリした現状打破だ。具体的には何も語らないが、ここから出ていきましょう、今から始めましょう、それでも暴れてやりましょうと。歌い続けて25年。変わらないまま25年。その構造に何か得体の知れない虚無を感じるのだった。
(文=石井恵梨子)
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