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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 寺山修司没後30周年に苦言?

元・天井桟敷舞台監督が、寺山修司没後30周年にラディカルな提言「脱・寺山のすすめ」

IMG_4048.jpgアップリンク代表・浅井隆氏

 この経験は、天井桟敷解散後に浅井氏が設立したアップリンクの映画配給の場にも表れている。

「日本で評価されていなくても、海外の演劇プロデューサーは天井桟敷を評価してフェスティバルに招待してくれました。アップリンクでも評価の定まった映画監督の作品を配給するばかりではなく、僕が映画祭で見て、いいと思った作品を日本に持ってくることをいつも心がけています」

 数々のアヴァンギャルドな作品や、シリアスなドキュメンタリーを送り出すアップリンクも、寺山の存在なくしては生まれていなかっただろう。そんな浅井氏のこと。30周年という節目の年になされる寺山再評価のムードをさぞ喜んでいるのだろうと思いきや、「あまり加担したくない」と、そこには微妙な思いがあるようだ。

「本当に天井桟敷がすごかったのなら、当時もっとお客さんが入ってもよかっただろうし、もっと日本でも評価されてよかった。これは裏返せば、誰も自分の目で評価していないということですよね、昔も今も。当時の演劇は映像として残されていないし、あるのは台本と著書だけ。そこで、どんどん伝説が肥大化している。30周年で再び注目を集めることは、悪いことではないと思います。けれども、30年前に死んだおっさんの話よりも、いま面白い人を追いかけるべきではないでしょうか。かつて、寺山さんが亡くなった後の世間の様子を見て、彼を懐かしんだり、過去を見続けることはやめようと思ったんです。過去を振り返るのではなく、自分の感性で何か面白いと思ったら、演劇でも音楽でも映画でもなんでもいいから、正当に評価して、人に勧めたり、応援したりすることが大事だと思いますね」

 すでに、浅井氏は寺山の本のページを繰ることもなければ、演劇作品の再演に足を運ぶこともないという。

「あえてラディカルに言うなら、寺山作品を読む必要もない。それよりも、自分で街の中の面白いものを見つけて探し出すべきだと思います。30年を経て、寺山さんの作品もすでに古典となりました。もしかしたら、本人も読まれることを望んでいないかもしれないですね」

 寺山自身「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」と著書の中で語っている。寺山の仕事を10年間にわたって見てきたからこそ、浅井氏は寺山を振り返ることなく“今”を見て仕事を続けているのだろう。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

●あさい・たかし
寺山修司の天井桟敷舞台監督を経て、87年、有限会社アップリンクを設立。映画の制作・配給・プロデュースを行い、映画上映やイベントができる「UPLINK FACTORY」、「UPLINK X」や「UPLINK Gallery」などを運営する。
http://www.uplink.co.jp/

最終更新:2013/06/26 21:00
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