「どうした!?片岡鶴太郎」『芸人報道』で見せた、“鶴ちゃん”の芸人魂
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かつて、鶴太郎がカラオケで歌うと、一緒に行っていたダチョウ倶楽部はそれに合わせて悪ノリで裸踊りをしていた。ある日、鶴太郎から「僕も脱がせてくれる?」と頼まれたダチョウ倶楽部は、鶴太郎の服を次々に脱がせ全裸にした。すると、鶴太郎は突然、“プッツン”したのだ。
「どんなに裸になっても、靴下は脱ぐな! そこは守れ!」と。
当時を振り返って鶴太郎は、それが「お脱ぎの芸の鉄則」だと解説する。
「素っ裸だと、おチンチンがあまり目立たないんですよ。靴下を履いているからこそ、これが余計にチャーミングでいいんですよ」
確かに思い起こすと、上島竜兵が脱ぐ時、靴下は履いたままだ!
番組の冒頭で、お笑い芸をやらないのは「やらせてくれる場所がないからだ」と嘆いていた鶴太郎は、最後にお約束のように持ち芸を披露した。九官鳥のキューちゃん、小森のおばちゃま、近藤真彦、具志堅用高、村西とおる……次々に演じられたものまね芸は身体が痩せシャープになったことで、さらに似たり、逆にアンバランスさが際立ったりで一層おかしかった。
鶴太郎は生真面目な男である。そして常に俯瞰して物事を見る男だ。28歳の時のインタビューで、すでに「ものまねはとりあえずのキッカケ」「(ものまねは)わかりやすいし、ウケる糸口みたいなもん」「早くキャラクターが前に出て、ものまねが後ろにいるようになりたかった」(「宝島」1983年5月号)と語っている。その思惑通りになった最盛期も、彼は自分を客観視し続けた。だから、間近で見るビートたけしや明石家さんまのような天才にはなれない、ということに早々に気づいたのだろう。そうして彼は俳優や芸術家にものまねするように憑依し、それを生真面目に取り組んだ。やがて“文化人”片岡鶴太郎として絶大な評価を受けるようになったのだ。
けれど、僕らは“鶴ちゃん”が好きだったのだ。『芸人報道』で久々に復活した“鶴ちゃん”。それは一夜限りだったのかもしれない。存分にフリが効いている状態だった。だから、その痩せた身体をブリーフ一丁で晒した姿で見せるものまねや、熱々おでんのリアクション芸は、どれもが破壊力満点だった。熱々おでんを前に、鶴ちゃんはブリーフ一丁の姿で、そっとメモを渡した。
「1つみれ/2しらたき/3きんちゃくは出汁を含んでかなり熱いので最後のオチで」
それは、生真面目で分析家の鶴太郎らしいメモだった。もしかしたら鶴太郎の文化人活動は、人生をかけた、長い長い前フリだったのかもしれない。だとするならば、この日の鶴太郎はまだまだオチ前の小ボケにすぎない。願わくは一夜限りではなく、その大オチを僕らの好きな“鶴ちゃん”の姿全開で、また見せてほしい。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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