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増加する“社員を襲う”ストーカー、巧妙な最新手口と対処法…法的手段は逆効果?

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

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増加する“社員を襲う”ストーカー、巧妙な最新手口と対処法…法的手段は逆効果? – Business Journal(5月28日)

「Thinkstock」より

 多くの場合、ストーカー行為は行為者にとっては妄想に基づく行為だが、その手口が変化してきたという。法的措置だけで解決できないことは報道される事件などから明らかだが、手口の変化に合わせて、どんな対策が求められるのだろうか? 危機管理コンサルタントで武蔵野学院大学客員教授の平塚俊樹氏は、ストーカー対策で豊富な実績を築いてきた。その経験から、ストーカーの最新手口と対策を語る。

–最近のストーカー行為には、どんな目的によるものが多いのでしょうか?

平塚俊樹氏(以下、平塚) ストーカーの多くは恋愛が目的です。以前は金とか、単なる嫌がらせなどを目的にしたストーカーも多かったのですが、最近は加害者が男性であっても女性であっても、恋愛感情を抱いている対象者に会いたくて、ストーカー行為に走る例が目立ちます。

–警察庁は平成21年3月に出した通達「ストーカー行為等の規制等に関する法律等の解釈及び運用上の留意事項について」で、法規制の対象になる行為に「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」と明記しました。効果は上がっていないのでしょうか?

平塚 この通達が、逆手に取られてしまったのです。恋愛感情さえ表に出さなければ規制に引っかからず、捕まらないと。だからストーカーは、恋愛とはまったく異なるアプローチ法でターゲットに近づこうと試みます。ターゲットの取引先になるとか、客になるとか、ファンになるとか。そして追い詰めていき、面会の口実をつくっていくのです。

–どうやって追い詰めるのでしょうか。恋愛が目的なら逆効果ではないですか?

平塚 ストーカーは、ターゲットに会いたくて仕方がないのです。食事などに誘って断られ続けると、会うためにビジネスの関係を築こうとします。ビジネスの舞台を使えば面会の機会を得やすいのではないかと考えて、取引先や客の立場から、質問攻めにしたり、クレームを入れたりして、なんとか会えないかなと試みるわけです。

–狙われた本人は職場に居づらくなって、限度を超えたら退職せざるを得なくなるのではないでしょうか?

平塚 女性社員の離職率の高い会社では、そうした被害に遭って退職していく例が多いですね。本人は体裁が悪いので、ほかの理由を述べますが。例えば、事務職募集の求人広告に「クレーム対応業務はありません」と書くだけで、応募者数が格段に増える時代です。それだけストーカーに職場を狙われた女性が多いのです。でも、いま申し上げた手口は、ストーカーとしては初級者ですよ。

●ストーカー対象の近所へ引っ越し、家族と接触

–初級者とはいえ、退職するまで追い詰められるのですから大ごとです。中級以上になると、どんな手口を使うのですか?

平塚 女性看護師が、ある社長をストーキングした例をお話ししましょう。その看護師は肉体関係をもった社長に、責任を取ってほしいと迫りましたが、社長は面会を拒否し続けました。すると、看護師は社長宅の近所に引っ越し、近所の住民が自然に出会ったように装って、社長の子供と道路や公園で会話を交わすようになりました。近所の親切なおばさんを装ったのです。そうして、社長と会う機会を探っていました。子供から話を聞いた社長は、生きた心地がしなかったといいます。

–不気味な行為ですが、看護師は違法行為に及んでいませんね。

平塚 そうです。中級者以上になると、なかなか法律は犯しません。それに、万が一逮捕されても、罰金刑なら金を払えば無罪、執行猶予が付けば無罪放免と事実上同じ、何度か逮捕されても保護観察処分というように、逮捕後のシナリオを見通した上でストーカー行為を行っています。この看護師の場合は、その社長が地域社会に貢献している人物なので守ってあげなければいけないと判断した警察が、2年がかりで看護師を他の県に引っ越しさせて解決してくれました。

–しかし、通常は警察に相談しても即座に動いてくれないでしょう。

平塚 ストーカー行為への罰則が、最も重くても保護観察処分であることを見越して行為を犯してくるので、警察はだいたい「逃げるしかない」と言ってきます。難しいのは、例えばある県から東京都内に通勤する人が、都内でストーカー被害に遭った場合です。本人の住所地の警察署が担当になるのですが、その警察署が警視庁管内である東京都に出向いて動いてくれるとは限りません。

–被害に遭った場合、どんな解決の手段が有効なのでしょうか?

平塚 ともかく会わないこと、無視すること。これに尽きます。法的に解決しようとするとうまくいきません。例えば、被害者の代理人となった弁護士が加害者に対して折衝すると、加害者は「弁護士を通して相手は自分にコミュニケーションを取ってくれている」、つまり「自分の存在を認めている」という感情を持ってしまう。当然、恋愛をあきらめてくれません。しかし、無視し続ければ、やがて恋愛の対象を変更します。特にルックスの良い女性は、自分が男性受けする自信を持っているため、あきらめて他の男性にアプローチする傾向が強い。

●取引先からのストーカー被害

–平塚さんが手がけたトラブルの事例を、お話しいただけますか?

平塚 あるソフトウェア開発会社の例ですが、この会社の20代のイケメン営業マンが担当した40代の女性社長が、ソフトをどんどん購入してくれました。2人は何度か食事をしただけでなく、出張先が同じ地域であるときに、営業マンが女性社長の車に乗せてもらったりしていました。肉体関係はありませんでしたが、ある時、営業マンは恋愛感情を持たれていてヤバイと気づいたのです。そして、女性社長からの食事の誘いを断ったら、連日何十本もの電話が営業マンに入るようになって、上司に相談しました。

–上司は営業マンと女性社長の間に入って、仲裁をしたのですか?

平塚 いえ、上司は社長と法務部長に報告して、会社は弁護士と警察に相談したのですが、女性社長に電話で注意をしたことが解決を遠のかせてしまったのです。そこで、法務部長から私に相談が入りました。私は、女性社長が美人だったので、「時間がたてば他の男性に気持ちが移るから、会社として無視するよう」助言したところ、しばらくして電話が入らなくなりました。

–その営業マンは、よく退職に追い込まれずに済みましたね。なぜ彼は、会社にかばってもらえたのですか?

平塚 会社に、ストーカー被害への理解があったからです。その会社の社長も、かつてストーカー被害に遭った経験があったため、営業マンに理解を示してくれたのです。社員がストーカーに攻められていても会社が理解を示さなければ、9割は退職してしまいます。先ほど申し上げたように、ストーカーは弁護士が法律で処理しようとしてもうまくいきません。会社には社員を守るだけでなく、常にアンテナを張って、ストーカー対策を社員教育などに取り入れることが望まれます。

–ありがとうございました。
(文=編集部)

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最終更新:2013/05/29 14:00
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