大震災の被害に遭ったのは人間だけじゃない! 被災地に取り残されたペットと家畜の過酷な現状
#映画 #ペット #東日本大震災
経済動物として殺処分を求めたが、踏み切れなかった牧場主も少なくなかった。
──確かに動物ボランティアのスタッフたちの献身ぶりは、一種の宗教のようにも感じさせます。岡田さんは笑って「宗教じゃない」と首を振っていますが、どうしてあそこまで熱心に活動できるんでしょうか?
宍戸 岡田さんに限らず、ボランティアのみなさんの声を公約数にすると「動物たちの現状を知ってしまったから。自分が行かないと、動物たちが死んでしまうことが分かっているから」ということです。岡田さんは、ご主人が神奈川に単身赴任していて、休日にはご主人も一緒にボランティア活動を手伝っているんです。岡田さんからは「人手が足りないので、牛の世話を手伝ってくれないか」と、取材していた僕も頼まれました。現場を見てしまうと、やはり断れないんです。「やまゆりファームが軌道に乗るまででいいから」と言われたんですが、なかなか軌道に乗らずに、その後も手伝い続けています(苦笑)。
──『犬と猫と人間と2』は宍戸監督がいろんな状況に遭遇していく、巻き込まれ型サスペンスならぬ“巻き込まれ型ドキュメンタリー”。各取材先で手伝いもしていたそうですが、実際のところ、カメラを回していた時間と手伝いをしていた時間は、どちらが長かったんでしょうか?
飯田 鋭い質問だ!(笑)
宍戸 それはですね……正直なことを言うと、ボランティア作業を手伝っていた時間のほうが、カメラを回していた時間よりも長かったと思います(笑)。「アニマルクラブ石巻」でも手伝い、原発事故で飼い主とはぐれた犬や猫たちを保護している福島市の動物シェルター「SORA」でも手伝い、「やまゆりファーム」でも牛の世話を手伝っていました。どこも人手が足りていない状態でしたから。
飯田 岡田さんも「この人なら、口説き落とせる」と踏んで、宍戸くんに頼んだんじゃないかな(笑)。でも、撮影を忘れなかっただけ、エライよ。最初、「ボランティアをしながら撮影をしたい」と相談してきた宍戸くんに対して、僕は「どちらかにしたほうがいい」とアドバイスしたんです。どっちを取れとは言いませんでした。それは本人が決めればいいことですから。このとき宍戸くんは「撮ります」と答えたんだよね。はっきり言うと、“撮る”ことのほうが難しい。ボランティアとして手伝うほうが、役に立っていることを自分も実感できて、その場での満足度は高い。カメラなんて、その場では何も役に立たないですから。だから両方をやろうとすると、ボランティアのほうに走ってしまうんじゃないかと思った。そのことが僕は心配だった。勘違いしてほしくないけど、僕も取材のときは、最低限の撮影が済んだら相手を手伝ったりすることはあります。取材で相手の時間を奪うわけですし、長期間の取材になると、かなりの精神的な負担も掛けてしまいます。手伝うことで相手とコミュニケーションを図るという一面もあるんです。「撮影だけしろ、手伝いはしなくてもいい」と言ったわけじゃないからね(笑)。
■義援金で購入したペットを手放す、悲しいスパイラル
──終盤、カメラは再び石巻へ。被災者たちは仮設住宅で新生活をスタートさせますが、義援金や給付金で新たにペットを購入。そのペットたちを早々に手放すはめに陥るという悩ましい問題が生まれているんですね。
宍戸 震災で家族や住まいを失った寂しさを紛らわすためにペットを衝動買いしてしまうんですが、結局ペットの世話ができなくなるというケースが生じています。僕が取材したペットショップのペット購入率は、震災後、通常の1.5倍に伸びたそうです。
飯田 失ったものをもう一度手に入れたい、という被災者の心情は理解できる。被災地では車や家電製品も売れていると思います。でも、ペットの場合は生活必需品ではないわけですよね。身近に動物がいてくれることで救われる人もいれば、やっぱり動物と一緒に暮らすのは無理だったと手放してしまう人もいる。
宍戸 そうですね。今回の取材を通して、やっぱり人間は犬や猫や牛たちに対して、緊急時でも責任を持って面倒を見なくちゃいけないということを強く感じました。また、災害によって日常を奪われてしまった人たちに接することで、人生は突然に変わってしまうこともある、それだけに人であれ動物であれ、命と命との出会いは大切にしよう、と今まで以上に考えるようになりましたね。
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