“男クサイルな”男性誌「OCEANS」、憎めない脱力感を失い漂う“不自然な”自然体
#ファッション
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“男クサイルな”男性誌「OCEANS」、憎めない脱力感を失い漂う“不自然な”自然体 – Business Journal(5月21日)
(「OCEANS HP」より)
身近さや取っ付きやすさみたいな印象を醸したいとき、「等身大」「飾らない」「気張らない」なんて表現を用いたりします。「ガツガツ」「あくせく」「前のめり」「必死」「弱肉強食」「優勝劣敗」みたいなマインドとは、反対の方向性ですね。「頑張り過ぎなくていいんだよ」「肩の力を抜いて」などと、ある種のいたわりや労い、肯定感を相手に与える感じでしょうか。言われたほうも、ちょっと安心するんですね。「おかげでちょっと『ほっこり』したよ」みたいなことで。
で、今回取り上げるのはこちら。
『OCEANS 6月号』(インターナショナル・ラグジュアリー・メディア)
35歳までは正直キメキメでしたけど……
もう大人はお洒落で無理しない
「OCEANS」(以下、オーシャンズ)は、男性誌の中でも「夫」「父」という属性をかなり明確に打ち出した媒体のひとつ。「妻から愛され、ご近所の奥さま連中から『○○さんのご主人、素敵ね』とウワサされるような夫」「育児にも積極的に参加し、子どもと過ごすのが無上の喜び。もちろん子どもから好かれまくりの素敵パパ」たらん、と訴求してくるんです。そういう男ってカッコいいよな、とこちらの肩を叩きながら、イケメンが歯を輝かせて爽やかに話しかけてくるイメージとでも申しましょうか。
同誌で何かにつけて用いられるのは「37.5歳(読者平均年齢)」という記述。中心読者層として、結婚して数年、未就学~小学校低学年くらいの子どもがいる年代を意識した誌面づくりを実践していらっしゃいます。
基本的に、ただのオヤジ枠には収まらない、いい頃合いの大人カジュアルを推している雑誌であり、「GOETHE(ゲーテ)」(幻冬舎)や「GQ JAPAN」(コンデナスト・パブリケーションズ)のようなオピニオン(面倒くさい能書き!?)色は極薄。ファッション誌的な色合いが強い媒体です。
ただ、どこかムズムズ感をおぼえる、洒落臭い感じもあるんですよねぇ。“自然体な俺”を必死に演じてしまう不自然さにも似た、収まりの悪さでしょうか。「良き夫、良き父」推しをしながら、現実的な結婚生活や子育てにつきまとう所帯臭さを誌面からほぼ感じないあたりも、そうした不自然さを醸成してしまっている一因なのかもしれません。まあ、ある種の妄想ツールであるファッション誌という媒体に対して、無粋なことを言っているのは承知の上ですが。
●オヤジギャグ的な脱力感があれば、まだ……。
ここでようやく、今回の特集に視点を戻すわけですが、特集の冒頭では、読者モデル諸氏が、自分の6~27年前の写真を開陳し、いまの姿と並べるコーナーが設定されています。要するに、新旧ファッション比較ということで、「前の自分はこんな感じで無理してましたけど、最近はイイ感じでヌケ感、わかっちゃってますよ?」みたいに笑いかけてくるんです。
いや、「無理しない」という言葉には共感します。でも、写真を見るにつけ、「昔も今も、方向性が違うだけでメチャメチャおしゃれじゃん」「つか『無理しない』と言いつつ、『無理しない(ヌケ感的な)』印象のファッションを、猛烈に気を配りながら着ているようにしか映らないわ」なんて思ってしまうのですね。わたくしのような、ファッションへの感度が低い人間からすると、「無理しないお洒落を励行するには、結局いろいろな無理を重ねなきゃいけないのかよ」と暗澹たる気分になってしまうのです。
たとえば、「昔の自分はダメダメでした。でも、○○したことによって、いまは成功しました」「私とアナタの違いは、○○したか、していないかの違いだけ」「元ダメ人間の私にできたのだから、アナタにもできる」みたいな論法は、仕事術系のビジネス書や自己啓発書にありがちなパターン。この論法のキモは、読者に対して「あ、それなら私にもできるそう」と思わせる、敷居の低さです。別にオーシャンズは自己啓発系ビジネス誌ではありませんが、「無理しない」にある種の癒やしやお手軽さを感じ取ってしまい、「これなら俺も着こなせるかも」とすがるような気持ちでこの特集を読んでしまうと、激しく裏切られてしまうかもしれません。「無理しない」ファッションって、なかなか高度で難しいですから。
そういえばオーシャンズって、2009年ごろまでは「男クサイル(男臭い+スタイル)」なんて微妙なキーワードをゴリゴリに押し出したりして、提案するファッションはいまと同じような方向性ながらも、もうちょっと茶目っ気というか、オヤジギャグ的な遊び心みたいなものが、特集タイトルや見出しから感じられたんですよ。『賢く、カッコよく、「大人のコロモ替え」の極意 夏先取りのイチOC!』(2009年6月号)とかね。ちなみにOCは「ON&CASUAL」の略とか(誌名の略称としても使われます)。
その他『“手ブラリアン”が狙うはローテクデイパ』(2009年8月号)とか、『タイドアップしてもクールでいたい! 「タイ涼族」におすすめの一本 そろそろ“重(おも)タイ”外して“主白(おもしろ)タイ』(同)とか、どこか憎めないような脱力感があったんです。個人的には、そのころのオーシャンズのほうが、最近のオーシャンズより好印象でございました。
「ガハハ、『男クサイル』って何だよ」と読者が笑顔でツッコめるくらいの距離感が、この雑誌にはちょうどいいような気がするんですけどね。
(文=漆原直行)
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