なぜか胡散臭い、楽天・三木谷氏のインターネット国有化論 結局、自社に利益を誘導か?
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なぜか胡散臭い、楽天・三木谷氏のインターネット国有化論 結局、自社に利益を誘導か? – Business Journal(5月15日)
(撮影:広瀬川「Wikipedia」より)
政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)の雰囲気が4月以降、とげとげしくなっているようだ。どうもそれは、楽天の三木谷浩史会長兼社長が突如、インターネットの国有化をぶち上げたから、というのがその理由とのこと。4月1日に実施されたテーマ別会合で三木谷氏は「インターネット・アウトバーン構想」を提言、「インターネットを国有化して、場合によっては無料で開放するのが望ましい」とした。ドイツの高速道路になぞらえたインターネット・アウトバーンである。「無料で開放されれば、最先端の通信環境が整う」と訴えた。
この提言にNTT(日本電信電話、鵜浦博夫社長)が最も神経を尖らせている。それは三木谷氏が、NTTグループの再々編問題にも言及しているからで、発言の真意をめぐってさまざまな臆測を呼んでいる。
2015年までに全世帯で光回線などのブロードバンド(高速大容量)通信の普及を目指す「光の道」構想に続く、ネット無料化のための提案とみられるが、規制緩和と相反するかのような国有化論に首をかしげる向きが多い。「光の道」構想ではソフトバンクの孫正義社長が、時の総務相、原口一博氏(民主党)を巻き込んで、NTT東西の光回線設備の分離を主張した。
三木谷氏は、かねてより「国が特定の産業に資金投入すれば、モラルハザードが起きる」と、競争促進のために規制緩和を主張してきた。経団連を飛び出してIT企業などで作る新しい経済団体・新経済連盟を立ち上げたのは、日本のIT産業を活性化させるための政策提言をするためだった。だから安倍政権に急接近した。12年末の衆院選直後に経団連などの経済団体のトップらに先んじて安倍首相と会談し、ネット選挙の解禁を働きかけた。規制緩和や起業促進策など、矢継ぎ早に提言をしている。
今や財界人きっての規制緩和論者として名を上げた三木谷氏の口からネット国有化が飛び出したのだ。「かねて主張していた規制緩和と、国有化論は明らかに矛盾する」と、産業競争力会議のメンバーから疑問の声が上がるのも無理はない。
しかし、三木谷氏の行動を知る財界人は「驚きはない」という。彼が公に発表する政策の行き着く先には、必ず、楽天の収益拡大のための受け皿が用意されているからだ、という。
「産業競争力会議のメンバーになったのは、政権に近づき、自分のステイタスを高めると同時に、ネットビジネスの強化に役立てる場にするという狙いがあった」(三木谷氏に詳しい財界人)
接近策は、実にうまくいった。新経連が4月16日に開いた初のシンポジウム「新経済サミット2013」に先立つ前夜祭に、多忙な日程を割いて安倍首相が出席。安倍首相は三木谷氏を「古い友人」と呼び、三木谷氏は「歴代首相の中で、最もネット産業に理解がある」とエールを返した。両者は蜜月ぶりをアピールした。
だが、安倍首相は「財界との関係強化に興味を持っていない」(政界関係者)との声もある。
「新経連シンポジウムの前夜祭に参加したのは、あくまで、三木谷氏が産業競争力会議メンバーとして政府の仕事を手伝ってくれているお礼の意味。経団連や経済同友会に偏らない、という姿勢を見せたかっただけでしょう」(同)
それぞれの思惑はどうあれ、三木谷氏が産業競争力会議で存在感を増した効果は絶大だった。医薬品販売では、インターネットの利用を規制する商慣行の撤廃に向けた法改正を求めている。これは、楽天のインターネットビジネスの利益に直結する。インターネット国有化論も同様だ。インターネットの基幹ネットワークを国有化してタダにすれば、ネットを駆使して事業を行う楽天は大いに儲かる。
三木谷氏は4月15日、報道陣に対し、「(インターネットすべてではなく)みんなで使う基幹網は国有化してもいいのではないか」と強調した。主語は「みんな」ではなく「楽天」ではないのか。だから、“新興の政商”と呼ばれたりするのだ。
(文=編集部)
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