国民栄誉賞受賞も、祝う家族はなし……“英雄”長嶋茂雄の悲しき余生
#出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
一茂は父親に無断でミスターゆかりのグッズを売り払い、父親に激怒された。また「長嶋茂雄」の商標登録をめぐって一茂と三奈の間で揉め、訴訟一歩手前までいったこともあった。そのために一茂は実家に近寄りがたく、双子の子どもを父親に会わせられないそうである。
長嶋と親しい張本勲氏がこう憤っている。
「とにかく、一茂が大バカ者なんです。私は友人の『セガサミー』(大手パチスロメーカー)の里見治さん(会長)に頼んで、亜希子さんの縁の品は取り返してもらった。しかし、親父の分はダメでした。本当に不幸な家族ですよ。長嶋さんは何も言わないけど、寂しいに決まっている。子どもが4人もいるというのに……、あれだけの人を、どうして他人が面倒を見ているのか」
長嶋は毎日のように、開門前の公園で1キロほどの早歩きをしている。厳しいリハビリにも週に4、5回は通っているという。栄光の背番号3番は何を思って歩いているのか。天覧試合のサヨナラホームランのことだろうか。
ここではほとんど触れなかった現代とポストについて書いておきたい。現代は部数維持のためなのだろう、アベノミクス礼賛ばかりが目立つ。今週も6月は株が暴騰するか暴落するかの正念場だとしているが、中味は安倍首相が決断できるかどうかにかかってはいるが「期待感をパンパンに膨らませている」(現代)。また、参議院選挙予測5000人調査をやっているが「合計すると、自民党の推定獲得議席は77。今回の非改選組と合わせると参院での勢力は126に達し、安倍首相が目標とする『単独過半数』が可能となる」(現代)そうである。
まるで自民党の機関紙を読んでいる気がするのは、私だけだろうか。週刊誌は反権力などというお題目さえも、誌面のどこにも感じられない(あるのは大橋巨泉のコラムだけか)。
ポストはやや安倍政権に批判的ではあるが、今号では「安倍超長期政権10年計画」という特集を組み、安倍が退いたあとの後継者には、他派閥ながら小野寺防衛相が有力視されているというのだから、眉に唾つけながら読んでも解せない。
そんな両誌がともに力を入れているのが、60歳以上はどんどんセックスを楽しめという特集である。現代などは「一挙19ページ」も割いて「60で始めるセックスの流儀」まで載せている念の入れようである。
これほどの大特集を組んでいるのは、それなりの読者がいるということであろう。たしかに還暦を超えても性の意欲が衰えない男性もいるだろうし、妻より若い女性とセックスしたい者もいるだろう。だが、みんながみんな渡辺淳一化しろと檄を飛ばされているようで、いささかげんなりする。
現代やポストを買い込んでバイアグラをせっせと飲み、小汚い連れ込みホテルの安ベッドでデリバリーされてくるオネエチャンを待つのは、侘びしさの極地だろう。まあ、そんな心境もたまにはいいと思うが、セックス以外にもっと楽しい老後の楽しみ方はないのかね。
(文=元木昌彦)
●もとき・まさひこ
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事