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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 震災をきっかけにAV女優に
『それでも彼女は生きていく』著者インタビュー

「前向きな言葉に隠されたつらさ」震災をきっかけに“AV女優”という仕事を選んだ女たち

――AV女優を選択した彼女たちの言葉からは、後ろめたさや悲壮感のようなものはあまり感じられませんね。

山川 「稼ぎたい」「お金を貯めたい」と、将来の夢を語る彼女たちの言葉はとても前向きでした。彼女たちには頑張ってほしいと思いますが、家族に隠し、バレたら結婚するのも困難、それにインターネットで全世界にセックスが配信されます。彼女たちの前向きさの裏に隠されたリスクを考えると、どこかもどかしい思いがあります。

――本書あとがきにも「前向きな言葉に隠されたつらさ」と書かれていますね。

山川 彼女たちに限らず、被災者と呼ばれる人たちは、東京発の「絆」「頑張ろう」といったスローガンのせいか、「前向きに生きなければ」と思わされてしまう。しかし、本音の部分では「絆ってなんなの?」「誰が言っているの?」という疑問を持っている人は多いんです。生きる上で前向きなほうがいいのはもちろんですが、ずっと前向きに生きなければならないというのも、つらいのではないでしょうか。

――東京で生活していると、震災はどことなく“終わったこと”に感じてしまいます。今でも気仙沼や石巻に足を運んでいる山川さんは、この状況に違和感がありますか?

山川 東北に行くたびに感じますね。震災直後はほとんど震災絡みの仕事ばかりでしたが、最近では震災のことを書く機会も少なくなっています。日常の仕事としては、震災とは関係のないものが多いのが現状です。

 今年も多くのメディアでは3月11日に向けて特集を組み、それが終わったらぱったりと報道がやんでしまった。被災者から不信感を持たれても、やむを得ないのではないでしょうか。僕も震災から1年目は毎月足を運んでいたのが、だんだん2カ月に1回くらいのスパンになってきています。冗談半分ですが、被災地に住む大学時代の先輩からは「被災者を食い物にしたのか」と言われました。

――冗談半分とはいえ、重い言葉ですね。

山川 本音も半分だったと思います。

――では、被災地・被災者が求めていることは、なんなのでしょうか?

山川 取り残されないことだと思います。震災直後の2011年4月に、大船渡と陸前高田の集落に行ったんです。まだ震災から1カ月しかたっていないのに「福島のことばかりで私たちのことは忘れられている。忘れないでほしい」と泣きつかれました。小さい集落だったから、物資もボランティアも来ない。取り残された感覚だったんです。それから2年を経ても、そんな感覚が被災地には残っています。

――本書を通じて、山川さんが描きたかったことはなんでしょうか?

山川 親や友人に言えないようなことをしていても、人間は、自分の生き方を肯定していかなければ生きていけません。僕は、彼女たちの生き方を応援したいと思いながら書きました。ある女性読者からは「AVに出るという選択以外は共感できる」という感想をもらったんです。これはAV女優の物語ですが、同時に東北の普通の女の子の物語でもあります。20歳そこそこの若い女の子が、震災で何を感じて、AVに出るまでに何があったのかを読んでほしいですね。東京では震災についての報道が沈静化していますが、彼女たちはまだ、震災の延長線上で生きているんです。
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])

やまかわ・とおる
1977年、山形県生まれ。ルポライター。東北学院大学法学部卒業後、國學院大學二部文学部に編入。在学中より『別冊東北学』(作品社)の編集に携わる。著書に、東日本大震災を一年間取材した『東北魂 ぼくの震災救援取材日記』(東海教育研究所)、調査捕鯨に関する『捕るか護るか? クジラの問題』(技術評論社)、『離れて思う故郷』(荒蝦夷)など。

最終更新:2013/05/20 16:06
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