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上原さくら離婚、なぜ5億円慰謝料要求がゼロ円で成立?慰謝料の誤解とカラクリ

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

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上原さくら離婚、なぜ5億円慰謝料要求がゼロ円で成立?慰謝料の誤解とカラクリ – Business Journal(5月10日)

『Eternal』(ホリプロ/上原さくら)より

 弁護士法人アヴァンセリーガルグループのパートナー弁護士で、企業法務から民事/刑事事件、インターネット関連法務など幅広い分野で豊富な経験を持つ山岸純氏が、話題のテーマや身近な紛争事案などについて、わかりやすく解説します。

 最近、タレント・上原さくらさんの離婚協議において、慰謝料が5000万円とも5億円ともいわれ、話題を呼びましたが、結局、慰謝料ゼロで離婚が成立したようです。

 芸能人の離婚は、とかく話題を呼ぶものですが、我々一般人にとっては「5000万円」であっても、なんだか途方もない金額のような気がします。それが、「5億円」といわれたり「ゼロ円」になったりするのですから、「そもそも、慰謝料って何!?」という疑問がわくのは当然です。

 では、「離婚の慰謝料」とはどのように決まるのでしょうか?

 そもそも、法律上の「慰謝料」とは、精神的な苦痛を一方的に与えた者が、苦痛を一方的に受けた者の損害を賠償するための金銭のことをいいます。そうすると、「離婚の慰謝料」とは、「離婚の原因」によって苦痛を一方的に与えた配偶者が、苦痛を一方的に受けた配偶者に対して支払う金銭と考えることができます。

 したがって、「離婚の慰謝料」は、「離婚の原因」と切っても切り離せません。

 そして、「離婚の原因」には、「暴力」「不倫」「浪費癖」「性格の不一致」といったものが挙げられるかと思いますが、例えば「暴力」が原因で離婚に至った場合、大阪高等裁判所が300万円の慰謝料を認めたことがあります。また、不倫を繰り返して、ついには家を出て妻と別居し、さらには妻に対し暴力も振るっていた夫の場合、横浜地方裁判所が1000万円の慰謝料を認めたこともあります。

●慰謝料は認められにくい?

 もっとも、ご存じのとおり、世の中の「離婚の原因」のほとんどは「性格の不一致」です。

「暴力」とか「不倫」といったように、どちらに責任があるのか明らかな「離婚の原因」の場合は「離婚の慰謝料」も認められやすい傾向にありますが、「性格の不一致」の場合、どちらに責任があるのかシロクロはっきりさせることは不可能ですし、仮に、どちらかに責任があるにしても、そのきっかけをつくったのが相手方だったりもします。このように、世の中の「離婚の原因」のほとんどは、お互いになんらかの責任があることから「離婚の慰謝料」は認められにくいという傾向にあります。

 要するに、多くの「離婚の原因」は、“犬も喰わない猫もまたぐ夫婦喧嘩”の延長にあるわけですから、法律的には、どっちかが一方的に「離婚の慰謝料」を請求できるなんてことはほとんどない、ということです。

 これを敷衍するならば、ほとんどの離婚の場合、法的な「離婚の慰謝料」の額の決め方や相場なんてものは存在しないのです。

 それでもなお、よくネット上で、「離婚調停で旦那から慰謝料○○万円を勝ち取った」などといった体験談が書かれていたり、上原さんのように「5000万円」といったとんでもない額が出てきたりするのはなぜでしょうか?

 一言でいえば、「早く離婚したい方が相手を黙らせるために“手切れ金”として支払う金銭」が、「離婚の慰謝料」という名目で考えられているからです。

「離婚したい」という要望が強ければ、早く金銭を払って解決したいがために高額の金銭を提示するでしょうし、その際に提示する額は、実際に自分が支払える額(資産・収入)による、ということになるのです。

 要するに、ビル・ゲイツ(マイクロソフト会長)やマーク・ザッカーバーグ(Facebook社・CEO)と結婚していて、彼らが「どうしても、今すぐに離婚したい」という場合には、「離婚の慰謝料」の額は天文学的数字になるでしょうし、反対に、普通のサラリーマンと結婚していた場合には、“普通の額”になるということです。

 そして、当事者間の話し合いで決まらなければ、最終的には申し立て等を受けた裁判所が判断することになりますが、前記のとおり、「性格の不一致」の場合の「離婚慰謝料」はなかなか認められないようです。

●「離婚の慰謝料」=「離婚に応じてあげる額」

 このように考えると、上原さんの元夫が提示したとされる「5000万円」は、「お願いですから、とっとと離婚させてください」というセリフを「離婚の慰謝料」という“言語”に“変換”したものですし、上原さんが要求したとされる「5億円」は、「喜んで、とっとと離婚してあげます」を“変換”したものと考えることができます(もちろん、上原さんが“売り言葉”に“買い言葉”で応じただけとも考えられますが……)。

 もっとも、上原さんの場合、一部報道によれば離婚協議の最中に、別の異性とのなんらかの“関係”が発覚し、「ゼロ円」になったとのことです。おそらく、なんらかの理由により、上原さん自身も「お願いですから、とっとと離婚させてください」という気持ちになったからだと考えられますが、この点からも、多くの場合の「離婚の慰謝料」が、「離婚に応じてあげる額」と同義語であることが理解できるでしょう。

 なお、離婚に際し、結婚後に夫婦が築いてきた財産を分割する(財産分与)話し合いというのがありますが、これは「離婚の慰謝料」とはまったくの別物です。
(文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ・パートナー弁護士)

弁護士法人アヴァンセリーガルグループ
東京、大宮、大阪に拠点を持つ、法律のスペシャリスト弁護士法人。特に企業法務全般、交通事故・医療過誤等の一般民事事件、および離婚問題・相続問題等の家事事件に強みを持つ。また、無料法律相談も常時受け付けている。

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最終更新:2013/05/11 07:00
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