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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.222

「劇的ビフォーアフター」と岩井ワールドが合体『建築学概論』で味わう“蛇の生殺し”感覚!

kenchikugakugairon2.jpg大学時代のスンミン(イ・ジェフン)とソヨン(スジ)。
童貞男子にとっては指切りの内容以上に憧れの女の子との肉体接触がうれしい。

 大人になったソヨンと打ち合わせを進めることで、スンミンの中で封印されていた思い出が次々とフラッシュバックしていく。現代と学生時代の2つのストーリーが絡まっていくという展開は、韓国でも爆発的な人気を呼んだ岩井俊二監督の往年のヒット作『Love Letter』(95)を彷彿させる。でもって、建築士となった主人公が依頼人の要望を取り入れながら家を建て直していく展開は「大改造!!劇的ビフォーアフター」(テレビ朝日系)を思わせるもの。ヒロインの思い出が刻まれた古い柱やセメントの足洗い場を残して、オシャレにリノベーションしていくところが心憎い。イ・ヨンジュ監督自身が建築士でもあるそうだ。15年の歳月を経て、スンミンとソヨンの恋愛もリノベーションできるのだろうか?

 本作の何が素晴らしいかって、ヒロインの大学1年生時を演じたスジの初々しさに尽きるでしょ。スジはK-POPグループ「Miss A」のメンバーで、本作が映画デビュー作。済州島出身で、ソウルでひとり暮らしを始めたばかりという垢抜けない感じがサイコー。建築学概論の授業に飛び込んできたスジの登場によって、観客は一気にノスタルジックな世界に引き込まれるわけですよ。男が胸の奥に隠し持っているタイムマシンのスイッチを自動的にオンにしてしまう不思議な魅力の持ち主なのだ。帰り道が一緒で話し掛けようとするけれど、タイミングがつかめず挙動不審男になってしまう同じく大学1年生のスンミン(イ・ジェフン)。地方から上京したばかりのソヨンに常にマウントポジションをキープされ続ける、絵に描いたような童貞くんだ。音楽学科からの受講生であるソヨンは、男ばっかりの理工系キャンパスではあまりにも眩しすぎる。到底、スンミンの口から「俺と付き合ってくれ」とは言い出せない。それでもレポート課題を一緒に調べていくうちに、次第に距離が縮まっていく。同じイヤホンでCDウォークマンを一緒に聴いたり、夜中に酔っぱらってデカい声で彼女の名前を叫んだり、他の男子学生と仲良く話しているのを目撃して嫉妬の炎をメラメラ燃やしたり……。誰もが経験した童貞時代のあのモヤモヤした“蛇の生殺し”感覚が生々しくスクリーンで再現されていくわけですよ。どうやら“はづかしい恋”が記憶の中で純化され、“はつ恋”へと変わっていくものらしい。

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