『惡の華 ~ハナガサイタヨ会~』徹底詳報 「原作ファンはこれを待ち望んでいると信じてた」
#アニメ
「実写でやったら、要は佐々木南(仲村佐和役)さん、三品優里子(佐伯奈々子役)さん、植田慎一郎です。でもどうしても、フイルムの中にしか存在しない人にしたかったんですよ、仲村佐和も佐伯奈々子も。だから、三品さんだけがいたら佐伯奈々子になるわけじゃない、日笠(陽子)さんの声が加わって佐伯奈々子になる。伊勢ちゃんの声がはまってようやく仲村佐和になるという方向に、持っていきたかったんですよね。だからどうしてロトスコープかと言われてもわからない。それが一番原作が求めていることだと思ったし、先生もそうだそうだと言った。俺たち2人は、原作ファンは絶対これを待ち望んでいると信じて疑わなかった。だから原作ファンの人が『なんじゃこりゃ?』となったと聞いて、『あれ?』って。俺は原作を読み間違えたのか? でも先生と俺はズレがないんですよね。そこが不思議なところです」
これに対して「僕がズレていたんですよ」と押見。伊瀬は次のように肯定した。
「あれが2次元の原作の画をそのまま描いたアニメーションだったら、また全然別物になっていたと思うんですよね。先生は最初に『惡の華』はジャンルに分けられないものだとおっしゃっていたじゃないですか。変態だけを描いている漫画ではないし、仲村に罵倒されてキュンキュンする作品ではない。それを提示するには、アニメでもない実写でもない2.5次元的なところで描いているこのロトスコープはすごいと思いました」
音響でもロトスコープは効果的に働いていた。
「実写の画は見られるんですが、最終的な画がどうなっていくかまったくわからない状態です。音をどう作り上げていくか、音響監督のたなか(かずや)監督と音響効果の川田(清貴)さんと3人で話して、わからないね、というのが、実は最初の結論だったんですよ。ただ実写をもとに画を描いていくということは、一度実写の画に対して説得力のある音を作っていこうという方向性があり、セリフのアンビエンス(背景音)とか、効果音の付け方も全部決まっていった。第1回の後に、初めからロトスコープの画でやっていたらこの音にはならなかったよね、という話をしました。その場合、アニメ的な方向に作りを寄せていくことになったんだろうなと。実写の音のままロトスコープに当てて逆にマッチした加減が面白い」(名倉)
「アニメでこの音出せるんですね」という長濱の言葉に、名倉は「アニメじゃねえもん、実写につけてんだもん」と返したという。
「こんなにリアルな音を作れるんだなと。全部が組み上がるまでは想像しきれなかった」(長濱)
スタッフにも予測不可能な着地点が視聴者にわかるわけがない。なんともライヴな作りだが、それもある程度は狙いのうちだ。ホラーのように始まり、ギャグに転化した第3回を、松崎は「僕は仲村さんがかわいい回。河原でかわいい回」と評している。
「滑稽に見えるところから恋愛の要素が出てきて、いろいろ形が変わっていくところが面白い」と長濱が言えば、「主人公も一貫していないですしね」と押見。
人間とはそういうものだ。ちょっとの付き合いで表面はわかっても、心の深奥まではわからない。そのドロドロをえぐり出すことがテーマであれば、1話ごとに作品が表情を変えていくのも当然だ。『惡の華』は生き物のようなアニメであるらしい。
●登壇者コメント
伊瀬茉莉也 「すみません、飛び入りで参加させていただいちゃいました。この思いがどれだけ伝わるかわからないんですが、この『惡の華』に携わっている人は、みんな同じ思いだと思います。特別なんですよ。どれだけ特別かって? むちゃくちゃ特別(笑)。最終回のアフレコが終わったときは寂しくて、自分の半身が持っていかれた気分。だからこうやってイベントに遊びに来て飛び入りしちゃうし、アフレコは終わったけど、来週からダビングのほうに……そういうこと、今までにないから。仕事として割り切っていない。本当に特別な作品なので、どうぞみなさんも、オンエアを最後まで見てください。ものすごい衝撃が待ってます」
名倉靖 「飛び入りでごめんなさい。本当にすいませんでした。アフレコも全部終わっちゃって、音響作業が概ね真ん中くらい。アフレコも衝撃なんですが、毎回毎回ダビングも『ああ~っ』と……。冷静な部分を持って現場に臨んでいるんですが、そこを超えた衝撃が毎回出来上がっていて。各話微妙にニュアンスが違うんですが、回を追ってすごくなる。この先、すっごく楽しみにしていてください」
植田慎一郎 「今日は実写の映像を見ていただいたんですが、僕のあられもない姿を見た責任として、最後まで見ていただきたいなと思います。今日放送の4話、5話と進むにつれて、春日が気持ち悪くなっていくので」
長濱博史 「特別なものにはなっていると思います。現場は毎回変なテンションになるんです。出来上がってくるものはまったく予想がついていない。毎回先が楽しみで。自分の中では最終回が一番大きな意味を持っているんですよね。最終回は相当すごいです。自分でハードルを上げるみたいであれなんですが、ないです。最終回は、本当にない最終回です。本当にない。(※それ、まったく伝わってこないですよ、と松崎に言われて)俺は見たことがないんです。最終回でロトスコープにしてよかったなと思ったんですよね。ロトスコープでしかできないことをやった。それを楽しみに、ずーっと見ていってくれたら、最終回はすごいものになります。最終回だけ見てもすごいですけど。またイベントも何回かやらせていただけるみたいなので、これからも『惡の華』をよろしくお願いします」
押見修造 「オンエアのたびに、監督に感想メールを送るようにしていたんですが、3話目くらいから素直に送れなくなってきて。悔しくて。漫画より面白いじゃないかと思って、あまりテンションの高いメールが送れなくなってきた(苦笑)。4話目も嫉妬して。しかもここからもっとすごい回ばっかりなので、これは自分も頑張って漫画を描かないとと、決意を新たにしました。これは、いち視聴者として見ないともったいない作品だと思っています。ぜひ見てください。漫画も読んでください」
※なお、この実写版第3回はイベントのみの限定上映の予定だったが、ファンからの反響に応える形で後日配信された。
(取材・文=後藤勝)
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