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『惡の華 ~ハナガサイタヨ会~』徹底詳報 「原作ファンはこれを待ち望んでいると信じてた」

■実写版第3回上映へのリアクション

 そして、この日の目玉である実写版第3回上映の時間がやってきた。ロトスコープ方式でアニメーションを制作するための「素材」である実写版は、しかし尺も合わせて一度かっちりとしたフイルムになっている。映像はモノクローム。ときに某「ボ○ギノール」CM調の静止画カットが入る。ほぼそのまま実写映画として見られる出来になっているが、あくまでもロトスコープのベースとなる映像であるため、一部にいかにも制作中という感じの痕跡が残っていた。

・お母さんの実写キャスト、茶髪の若い役者さん。
・図書室で返却カウンターの上に助監督が立っている。
・『惡の華』の本の表面はテクスチャを貼り込むため、マーカー仕様になっている。
・いっしょに下校するシーンの仲村佐和実写キャストの佐々木南は、就活中で髪の毛の色が黒くなっている。
これらは逐一、長濱監督によって解説された。

 冒頭、ブルマを手に挙動不審な春日のシーンから笑いが漏れる。これはこれでアリだ。十分鑑賞に耐え得る。OPを歌う「の子」の声に、「植田くんの声に似てません?」と伊瀬。その通り。ついでに言えば、第4回OPの後藤まりこ(元ミドリ)の声は、伊瀬に似ている。

 春日が佐伯奈々子の体操着を捨て、証拠隠滅を図ろうとするカットの背後に見えるおばさんを「ここむちゃくちゃ怖いですよね」という松崎に、長濱監督は「『桐盛館』という俺たちがお世話になった旅館の女将さんなんですよ」と説明。

 「うぉい春日、ドゥクシ」と山田が春日をいじるところでは場内から笑い。「春日、面白いことになってきたな」(山田)でまた笑い。とにかく山田はいるだけで笑える。

 第3回のクライマックスは図書室で仲村が春日の服を脱がし、佐伯の体操着を着せる場面である。

「佐々木さんは一旦、ここで手を(体操着の袖に)通すんですよ。アドリブでやってくれたんです」

 春日(海パンを履いた植田)を脱がして体操着を着せブルマを履かせるところは、本気で抵抗された状態で着替えさせ、かなり時間がかかったという。このシーンが終わり「先生どうですか?」と訊ねられた押見は「うらやましい!」を素直な感想をもらした。

 満月に佐伯が浮かぶシーンでも笑いが起こる。

「今どきやらないですよね。これがシュールギャグたるゆえん」(長濱)

フィリップ・K・ディックの『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』を手に持ち冷や汗をかく春日の背後で、山田が口笛を吹いて平静を装っているところでも、また笑いが起こった。完成したアニメ版ではピントをぼかした背後に山田がいたためわかりにくかったが、くっきりした山田(松崎)の顔に場内が和む。

■ずれと想定外

 気になるのは、この上映中、そして上映後に長濱から出てきたいくつかの言葉だ。

「(新人)は、昔の日本映画で必ず入れていたんです。縦書きだったらこれだろうと思って入れたんだけど、このギャグわからないかなぁ」
「これエンディング怖いですか? みんな格好いいと言ってくれると思っていたから」
「実写どうですか? 実写だけでもあり? そう言われると複雑な気持ち」

 どうも視聴者と長濱の読みがズレているようなのだ。しかしズレているということは、想定外の作品を届けているということでもある。それが新鮮な驚きと捉えられれば賞賛に、期待していない要素を捉えられれば非難に、それぞれ転換されるのだろう。

 賛否それぞれの要因となっている「実写でやらなかった理由」を松崎に訊かれた長濱は次のように答えた。

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