『惡の華 ~ハナガサイタヨ会~』徹底詳報 「原作ファンはこれを待ち望んでいると信じてた」
#アニメ
第1回(※正式な話数表示は「回」)オンエア直後から、絶大な賛辞と同時に強烈な拒否反応を呼び起こしたアニメ『惡の華』。ロトスコープの画が気持ち悪い、エンディングテーマ曲が怖すぎる……。しかし非難をよそに、評価の声も確実に増えてきている。緊張感あふれる日本映画的な第1回ののち、事態は仲村佐和の怖さと春日高男の挙動不審をもって笑いのターンに入り、大天使っぷりがたまらない佐伯奈々子の物語への本格参入によって恋愛の要素も醸しだされ、1話ごとにコロコロと表情を変えてきた。後述するスタッフの言葉によれば、今後も変転は続くという。最後まで見ないことには評価ができない作品であることは明白だ。
なぜこの作品はめまぐるしく表情を変え、見る者によって評価が著しく異なるのか? それもそのはず、スタッフやキャストも、第1回が完成するまでは着地点が見えていなかったのだ。
4月27日、パセラリゾーツ銀座店B3 BENOAにて開催されたイベント『惡の華 ~ハナガサイタヨ会~』には、監督の長濱博史、原作者の押見修造、春日高男役の植田慎一郎、それに飛び入りで仲村佐和役の伊瀬茉莉也、音響調整の名倉靖(SonoPower)、そして司会として山田役の松崎克俊(やさしい雨)が登壇。メイキング要素たっぷりのトークを繰り広げ、映像の元になった実写映像(第3回)の上映を行った。時系列に沿って言葉やリアクションを拾いつつ、『惡の華』考察の材料を積み上げていこう。
まず登壇したのは長濱、押見、松崎の三氏。長濱によれば、スターチャイルドの中西豪プロデューサーから「やってもらいたい作品がある」と声をかけられたことが、アニメ版『惡の華』制作のきっかけだったという。意欲的な中西に対し、長澤は否定的だった。これなら、と採用したのはロトスコープ。
「すごく原始的なアニメーションですね。今の進化したアニメーションとは違って、退化している」(長濱)
■絵柄が違う!
「原作と絵柄が違うので、原作のファンに生卵をぶつけられるのではないかと、長濱監督はずっと心配していたんです」とは司会を務めた山田役、松崎の弁。幸い、会場に卵を手にした原作ファンはいなかったが、実は初期の画は長濱自身が恐縮する出来だった。洗練されてきている現在とは、トレースの仕方が異なっていたのだという。
「唇とか眼の下のたるみ、鼻の小鼻を全部取った。試しに先生(押見)に見てもらって『実際はもっとかわいくなる、もっと格好よくなるはずだ』と。先生は『すでにかわいく見えてますよ』を言ってくれましたが」(長濱)
自分でもトレースしてみた押見は「適当に線を拾ったら、ああはならない」ことを確認。絵描きとして、その可能性を感じていたようだ。
「トレースは人によってバラバラでした。それをまとめるのが一番大変でした。今でも」(長濱)
たとえば山田。演じる松崎のパーマヘアのラインを全部克明に取ると、存在感が半端なくなってしまう。そのためフォルムを整理し、髪の毛ではなくエフェクトのようなものだと考え、輪郭線を取っているのだという。
■奥深い録音調整
登壇した3人ともロフトプラスワンのノリでビールを頼むが、それが運ばれて来る前に水を運んできたのは、なんと仲村佐和役の伊瀬。遊びに来たはずが急遽出演することになり、「後で戻ってくるから」と一度退散する。
ここで登壇したのは、録音調整の名倉だった。彼も飛び入りである。
「『蟲師』からずっと録音調整をお願いしています。録音調整は奥が深い!」(長濱)
『惡の華』の場合、たとえば学校の廊下で話すとして、建物の材質、窓がどちら側についていてどのくらいの大きさかといった空間情報を考慮しつつ反響をつけ、まるでその場で話しているかのように加工していく。ほかにも、アフレコ中に声優の声を画の口パクに合わせて調整するなど、作業は多岐にわたる。
「基本的にセリフに関する音周りのすべてと、深田さんがお持ちになられる音楽のバランスを調整しています。効果音は音響効果さんが作ってこられるので、録音現場では効果さんと2人でミックスしていくという作業です」(名倉)
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