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『惡の華 ~ハナガサイタヨ会~』徹底詳報 「原作ファンはこれを待ち望んでいると信じてた」

 音響制作についてはロトスコープということで、大きくは二段階に分かれている。あらかじめ編集された実写版にアフレコをしてセリフを載せるヴァージョンと、最終的にアニメーションになった画に対してさまざまな音源を搭載、ミックスした最終ヴァージョンだ。この日に上映された実写版は最終ヴァージョンだった。

 原作の押見は「通っていた通学路で聞いた音がまざまざと甦る。あのカーブミラーのところ、すっげえ静かなんですよ。車の音もあまりしていなくて、烏の声と、3人の声が反響しているんですけど、それを僕は知っている」と、アニメ版『惡の華』の音響を評価する。「この人が要です。この人がいなかったら、薄っぺらい音になってる」と長濱が称賛する名倉ら音響制作スタッフの労苦の賜物だ。

■植田慎一郎登場

そして、春日高男役の植田が登壇する。現場では「カス」「バッカス(馬鹿カスの略)」「負けカス」と呼ばれて散々な植田だが、それは愛されていることの証であるようだ。長濱はチャラいジュノンボーイの植田を、オーディションで落とす気まんまんだったという。

「最初にオーディションに来たときは、今よりチャラっチャラな男だったんです。絶対にコイツだけは選ばない、と思っていた。いや、そりゃそうですよ。ジュノンボーイですよ。絶対ダメ。春日じゃない。外す気満々だったんですよ。でも、真面目なんです。あと弱い。芝居がものすごく弱い。オーディションで、男の子の役は順繰りに全部やったんです。山田をやっても弱い。小島をやっても弱いんだ、これが。もう、ヘロヘロなんです。人一倍奥にいる」(長濱)

「ナイスガイだと思いました。すごく人懐っこかったですよ。一番先に来て話しかけてきてくださって『僕のお姉ちゃんの写メ見ますか?』とか」(押見)

1時間半早くオーディション会場に着き、無音に耐えられない植田は、自分から長濱や植田に話しかけた。

「いいヤツだなと。最終的にすべてを賭けてくれるんじゃないかとね。『髪を切るのも裸になるのもブルマを履くのも、問題ないです。なんでもやります』と言ったから、じゃあと、春日くん(役)に決めました」(長濱)

■伊瀬茉莉也登場

 そして春日にブルマを履かせた変態類友、仲村佐和役の声優キャスト伊瀬が登壇した。伊瀬が仲村の役を射止めたことには、タイミングが大きく関わっていた。昨年、長濱に再会した伊瀬は「長濱監督の現場に帰りたい」と号泣。胸のうちをさらけ出したとき『伊瀬ちゃんにピッタリの役があるよ』と言われたという。

「“ピッタリ”とは、どういう意味なんだろうと思って原作を読ませていただいて『うおー……長濱監督はなぜわかってしまったんだろう? ピッタリじゃないか』と。『仲村の役は私でしか演じられません。演じさせてください』と、こちらからもお願いしました」(伊瀬)

 このときの伊瀬は、仲村のように髪を短くし、何かをぶつけたいという力が出ていたという。「今、この役の時期なんじゃないかと思った」と長濱。

 自分の役者人生をすべてかけようと、伊瀬は原作を読み始めてから1年、心の中で仲村を育ててきた。仲村に「なる」作業は、もちろん現場でも継続してきた。

「アフレコ現場では、それぞれが役に入る準備をしているんです。植田くんはだいたい膝を抱えている。『俺は春日、俺は春日』と。ひよっち(日笠陽子)はソファーに体育座りして、ぼーっと抜け殻みたいになっていて。私は仲村の気持ちを作るために『おはよう』って、(植田に)近づいていくんですよ。でも彼は逃げていく。それを追いかけることから始まりました」(伊瀬)

■押見修造の指摘する「向こう側」

 ノロウイルスで倒れた2回を除き、ブースの後ろで漫画の原稿を書きながらアフレコに立ち会った押見は、原作者として、演技の監修に当たる一言を、時折放っていた。

「伊瀬ちゃんが植田くんに何かをぶつけたり叫んだりするとき、それが春日に向かっている仲村の言葉だった場合、必ず先生は『違和感』があると言うんですよ。『今のは、春日に向いていたから』と。1話の『うっせえ、クソムシが』は(担任の)先生に言うんじゃなく、虚空に言う感じ、と押見先生は言ったんですよね。中村は、春日の後ろにある向こう側に向かって言っている。『自分をよく見ろよ』と言うときも、同じです。春日と中村は同じ方向を向いているから、お互いを見つめ合うことはない。『私が見る向こう側をあなたも見なさいよ。あなたにも見えるはずなんだから』というのが仲村だと」(長濱)

 第1回「クソムシが」の本番テイクは、力が入りすぎ、向こう側ではなく手前の担任に向かってしまったため、テストのテイクが採用された。

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