生まれながら目が見えない人が映画を撮ったら、こうなった──『INNERVISION』
#映画
「生まれついての視覚障害者はSFアクション映画を作れるのか?」
その問いかけに、大抵の人は戸惑うのではなかろうか。だって、目が見えないのに映画なんて作れるワケないと思うじゃないか……。
5月4日(土)より渋谷・アップリンクにて公開されるドキュメンタリー『INNERVISION』は、生まれながら全盲の男性が映画を制作する過程を追うドキュメンタリーだ。
最初にこの映画を知ったのは、あるイベントで流された予告編だ。被写体となった男性は語る。
「喧嘩売ってきた相手が健常者だったら、まず目を潰すんだよ」
この男性の目は見えてはいない。生まれながらの全盲なのだ。それでも、彼は自信たっぷりに、そう語るのである。いったい、どんな映画なのだろうか? 被写体は魅力的な人物に違いないという確信はあった。それは本作品を制作した佐々木誠監督の初監督ドキュメンタリー『Fragment』を覚えていたからだ。911以後の世界を生きる若い僧侶を被写体にしたこの作品、僧侶は歓楽街で仲間たちと夜遊びを楽しみ、その足で苦行に向かう。かと思えばニューヨークへと渡り911の象徴たるWTC跡地で祈りを捧げる。よくもまあ、こんな魅力的な被写体を見つけ、かつ飽きるシーンのまったくないドキュメンタリーに仕上げたものだと驚嘆したことを、筆者はよく覚えていた。
そして、今回もやっぱり被写体は魅力的だった。映画の主人公である加藤秀幸さんは、ベーシスト・作曲家として活躍する人物だ。彼は、先天的な視覚障害を持つため、生まれた時から視覚の概念が、まったくない。だが、映画の冒頭で映し出される加藤さんを見ると「もしかして、目は見えているんじゃないか」と思ってしまった。目が見えないはずなのに、家庭用ゲーム機『ストリートファイター2』を楽しみ、あまつさえ目の見えている対戦者を叩きのめしているのだから。なんで格闘ゲームができるのか? 加藤さんは
「最初に波動拳を撃てば間合いがわかるから……」
と、話すのだ。ここで目の見えている我々は気づく。加藤さんには、我々とはまったく別のものが見えているのだと。映画の中で加藤さんは、語る。
「3Dというよりも、まず2Dがわからない!」
「美人ってなに? 誰がその顔が美しいって決めたの?」
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