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耐えても逃げても終わらない! ブラック企業“負の連鎖”をどう断ち切る?

 退職届を出したはいいが、その後2週間も出社しなければならないと思うと気が重い。また、その間、さらにひどい仕打ちが待っている可能性もある。だが、民法では「やむをえない正当な理由がある場合は、ただちに雇用契約を解約できる」という条文があり、それを使えば、即日解約できるケースがほとんどだという。また、最終的な手段として2週間出社しない、というのもアリだ。その間の給料は発生しないが、とにかく調子が悪いと言い続けるか、有給休暇が残っているのなら、その消化を理由に辞めるのも手だという。

「基本的に労働者は、職業選択の自由もあれば、強制労働も禁止されている。経営者側から無理やり強制される理由はないんです。大切なのは、その人自身がそういう強い気持ちでやれるかどうか。結局のところ、この問題は労使関係を変えていくしかないんです。どうしたら働く人たちが力をつけていけるのか、というのが本質なんです」

 とはいっても、世の中不況真っただ中。仕事があるだけありがたい、という風潮もある。大多数の人にとって、経営者に噛み付くなんてとてもじゃないが考えられない。だが、だからこそ労組を作る必要がある、と須田さんは言う。

「みんな、ブラック企業に当たってしまった自分は運が悪くて、転職すればホワイトな会社に行けるんじゃないかという幻想を抱いている。でも、僕らは7000件の事例を見ていますが、大企業から中小零細まで、正直、ブラック企業ばっかりなんですよ。そこを“運が悪い”と捉えるのではなくて、その環境をどう変えていくか。ブラック企業に入らないようにするのではなく、入った後どうするのか。みんな、自分や家族の生活を守るために隣で働いている人を出し抜いたり、足を引っぱったりして自分だけ生き残るという処世術を身につけてしまっていますが、それは破滅への道でもある。企業内で労働者が立ち上がらなければ何も変わりません。一人では弱いけれど、数が多くなればなるほど力も強くなり、労働者と対等な立場に立てるんです」

 実際、労働相談センターでは、中小零細企業に労組を作ってきた実績がいくつもあり、最近では、東京メトロの駅売店に労組を作ることに成功している。ここで働く女性のほとんどが契約社員で、手取りは12~13万円程度。仕事内容はほとんど変わらないのに、正社員との待遇は天と地の差。そこで須田さんたちが間に入り、有給での忌引き休暇や昼食の補助、また微額ではあるが、昇給制度といった要求をメトロ側に認めさせたという。

「労組は2人以上集まれば組織として認められます。細かい手続きなど必要ありません。会社にとっては厄介な存在ですが、労組は憲法で認められた権利ですから、経営者は不正に解雇したりできない。そこから地域の労組と協力することで、さまざまな交渉ができるようになります。労組というと何かイデオロギーや人権意識が強くないとできない、と思っている人も多いかもしれませんが、そんなことはありません。海外ではごく普通なことですよ。労働三権はすごくよくできたものですし、私たちはそれをもっと上手に生かしていくべきだと思います」

 「ブラック企業」と聞くと、一刻も早く抜け出すことが先決だと思われがちだが、それでは負の連鎖は終わらない。そこから一歩踏み込み、自分で環境を変えていく努力、そして労働者の意識改革が求められている。
(文=編集部)

最終更新:2013/05/01 19:42
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