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映画『戦争と一人の女』公開記念インタビュー

“ゆとり教育”の旗振り役からポルノ映画製作へ! 元文科省官僚・寺脇研が批判騒動の真相を語る

sensotohitorinoonna04.jpg低予算ながら戦争映画を完成させた寺脇氏。
「戦後の焼け跡シーンを被災地で撮ろうという案が出たが、
却下しました。そんなことをしたら下品な映画になりますから」。

──マイペースで物静かな「ゆとり世代」を大人たちが叩くのは、バブル時代の熱狂が忘れられないから?

寺脇 忘れられないどころか、またバブルを再現しようとしているんでしょ、アベノミクスは? オリンピック誘致で「より速く~、より高く~、より強く~♪」だなんて、一体いつになったらバカが治るのか……。

──寺脇さんは06年に退職勧奨を受けたと、ウィキペディアにあります。文科省を辞職したのは、「ゆとり教育」への風当たりが強かったせいですか?

寺脇 退職勧奨を受けたのは事実ですが、それは役人なら誰もが経験することだったんです。遅いか早いかの違いがあるだけ。今は変わってきていますけど、私たちの頃は同期の誰かが事務次官か局長クラスに就けば、なれなかった者たちは後進に席を譲るために辞めて、天下りするしかなかった。私の場合は天下りを断り、ずいぶん長居しました。それで後輩が上司になるという事態になり、組織が混乱するから辞めることにしたんです。昔からあるこのピラミッド制度をどうにかしようと、現在進められている公務員改革では大きなポイントになっています。「ゆとり教育」の責任を取らされたわけではないですよ。まぁ、「あいつをエラくしようか」という際にネックになったのは確かでしょう(苦笑)。自民党からにらまれ、「あいつを局長にするな。早く辞めさせろ」と圧力が掛かっていました。保守派にとって、「ゆとり教育」はリベラルな発想だから目障りなんですよ。安倍晋三さんが大好きな「愛国心」なんかよりも、個人個人の「生きる力」を持とうという考え方ですから。また「ゆとり教育」は一人ひとりの個性に合わせた教育を目指したものだから、左翼からも嫌われました。左翼って、なんでも平等の社会主義ですからね。右からも左からも嫌われていた(苦笑)。

──「ゆとり教育」の成果を、どう見ていますか?

寺脇 「ゆとり教育」が始まってもう10年。そこそこ答えは出てきているように思います。それをどう評価するかという問題でしょうね。今の高校生はエラくなろうと思っているヤツが少ないといわれていますが、いいじゃないですか。そりゃ、中国みたいに発展中の国はエラくなろうとするヤツは多いでしょうけど、成熟した社会では全員がエラくなろうとする方が無理なわけです。エラくならなくてもいいから楽しく人生を過ごしたい、ちょっとほかの人のお世話もしようか。そういう考え方をする若者たちがいないと、これからの社会は成り立ちません。エラくなろうと考えている人たちは、お年寄りを大切にしようなんて考えませんよ。お金があった頃は若者たちから吸い上げた年金で高齢者は介護を受けることができましたが、もうそれができなくなるわけです。若い人たちが高齢者をいたわるような社会じゃないとダメでしょ。ゆとり教育の成果が徐々に出始め、よかったなと思っていますよ。
(取材・構成=長野辰次/撮影=名鹿祥史)

『戦争と一人の女』
原作/坂口安吾 企画/寺脇研 脚本/荒井晴彦 音楽/青山真治 監督/井上淳一 出演/江口のりこ、永瀬正敏、村上淳、柄本明 
配給/ドッグシュガームービーズ R18 4月27日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開 (c)2012戦争と一人の女製作運動体 
<http://www.dogsugar.co.jp/sensou>

●てらわき・けん
1952年福岡県生まれ。ラ・サール高校を卒業後、東京大学法学部へ。75年、旧・文部省に入省。大臣官房政策課長、大臣官房審議官などを歴任し、「ゆとり教育」を推進した。06年に文部科学省を辞職。京都造形芸術大学芸術学部教授を務める傍ら、映画評論家としても活動中。『韓国映画ベスト100』(朝日新書)、『さらばゆとり教育 学力崩壊の『戦犯』と呼ばれて』(光文社)、『官僚批判』(講談社)、『ロマンポルノの時代』(光文社新書)など著書多数。

最終更新:2013/04/26 18:00
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