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映画『戦争と一人の女』公開記念インタビュー

“ゆとり教育”の旗振り役からポルノ映画製作へ! 元文科省官僚・寺脇研が批判騒動の真相を語る

sensotohitorinoonna03.jpg中国大陸からの帰還兵である大平(村上淳)。女性の首を締め、
苦しむ姿に異様な興奮を覚える性倒錯者となっていた。

寺脇 そうです。なるほど、戦場から帰ってきたら、そういうことも起こり得るだろうなと。なら、日中戦争はイラク戦争よりも期間が長く、規模も大きかったわけだから、もっとひどい経験をしただろうと。戦地に赴いた人たちは兵隊としてみんな銃を持たされ、大なり小なり思い出したくない体験をしたでしょう。狂気の男・大平には誰もがなり得るし、誰もが葛藤を抱えながら戦後を生き続けたということなんです。

──クライマックスでは、大平に天皇の戦争責任について言及させています。「神さまが人間になられたのに、人間が人間のままでは恐れ多い」と“けだもの宣言”するくだりはベテラン脚本家・荒井晴彦の独壇場ですね。

寺脇 荒井さんの脚本通りの台詞ではあるんだけど、実はちょっと思惑が違ってしまった(苦笑)。あのシーンは大平が演説口調で語る様子を1カットで撮っているけれど、本来なら尋問している刑事も取り調べを受けている大平も、天皇の人間宣言で混乱している中での言葉のやりとりにしたかった。一長一短あるシーンになりましたね。私としては、むしろ永瀬演じる作家が「結局、日本人は戦争に負けても何も変わらない」と言うくだりに思い入れが強い。荒井さんが坂口安吾の『堕落論』から引用した台詞ですが、原発再稼働や国防問題で揺れる現代の日本に通じるものでしょう。

■「ゆとり教育」の成果はすでに表れている!

──官僚時代についても聞いていいですか? 「ゆとり教育」の旗振り役として、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『真剣10代しゃべり場』(NHK教育)、『ここがヘンだよ日本人』(TBS系)と、あらゆるテレビ番組に出演していましたよね。

寺脇 『TVタックル』(テレビ朝日系)にも出ました(笑)。今回のインディペンデント映画の宣伝と同じです。お金がないから広告が出せない。自分でマスコミに売り込んで、インタビューに答えて記事にしてもらっているんですよ(笑)。「ゆとり教育」も同じでした。1990年代の日本はすでに成熟した社会になっていて、国民の理解なしでは受け入れられなくなっていました。あの大蔵省でさえ、自民党の一党支配時代に、消費税アップの導入に最初は失敗しています。大蔵省はお金があるから、おそらく電通あたりに丸投げして、さんざん新聞広告を打ち、テレビにも働き掛けたはずですよ。それでも失敗したわけです。大蔵省があんな挫折を経験したのは、初めてのことだったでしょう。世論というものを無視できなくなっていた。私のいた文部省は大蔵省のように莫大な広告費は使えないので、電通には頼めない。「じゃあ」ということで、私がマスメディアに出ることで「ゆとり教育」のアピールに努めたわけです。私が独断でテレビに出ていたわけじゃないですよ。ちゃんと文部省の了解をもらっていましたし、むしろ「よくやった」と褒めてもらっていました。

──「ゆとり教育」を受けた「ゆとり世代」が、社会に出るようになりました。映画業界では若者の洋画離れ、字幕離れは「ゆとり教育」の影響じゃないかと囁かれるなど、事あるごとに「ゆとり世代」は叩かれています。

寺脇 情けない大人たちが、そうやって若い世代を叩くことで「自分たちのほうが、まだしっかりしてる」と思いたいんですよ。若者の字幕離れではなく、あれはアメリカ映画離れです。あんなさ、ドンパチばっかりやってるアメリカ映画を観るのが嫌になっただけのことですよ。それならローマ人がお風呂に入っているほうが面白いや、ってことでしょう。バカバカしいけれど、そういったものを楽しむ感性があるわけです。戦闘ゲームみたいなアメリカ映画を観て喜んでいるよりは、よっぽど高尚だと思いますよ。

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