きうちかずひろvs. 三池崇史による“男の世界”!『藁の楯』に立ち込める濃厚なるVシネマの香り
#映画 #パンドラ映画館
(松嶋菜々子)にとって許せない存在。サイコ野郎はどう裁くべきか?
警視庁のSPである銘苅(大沢たかお)と白岩(松嶋菜々子)は殺人犯・清丸(藤原達也)の護送を命じられた。要人ではなく、凶悪犯にSPが付くのは異例中の異例。だが、日本中が異常状態となっていた。幼女陵辱殺害犯である清丸に対する憎しみが全国に溢れ、さらに孫娘を殺された資産家・蜷川(山崎努)が「清丸を殺した者に10億円の謝礼を払う」と全国紙に広告を出したのだ。清丸は身の危険を感じて、自ら福岡県警に出頭してきた。もし清丸が殺されれば、日本は法治国家として成り立たなくなる。銘苅、白岩の他、警視庁捜査一課の奥村(岸谷五朗)、神簪(永山絢斗)、福岡県警の関谷(伊武雅刀)の5人が清丸を東京まで護送することに。送検期限は48時間以内。だが、この任務は困難を極める。鬼畜人間はこの世から抹消すべきという社会正義と10億円あれば服役後も楽に暮らせるという打算から次々と刺客が現われる。なぜ、清丸みたいな人間のクズのために自分たちは体を張らなくてはいけないのか? 罪悪感のまるでない快楽殺人鬼を前にして、銘苅たちの倫理観はぐらぐらと揺らぐ。
『藁の楯』は言ってしまえば、三池監督の大ヒット時代劇『十三人の刺客』(10)の逆バージョンだ。襲撃する側ではなく、襲撃される側の視点に立ったロードムービーとなっている。どこから刺客が襲い掛かるか予測できない分、狙う側よりも狙われる側のほうが精神的にはしんどい。しかも、守るべき対象はまるで敬意を払うことのできない相手。護衛にあたる顔ぶれも寄せ集めで、一枚岩ではない。生かしておけば必ずまた罪を犯すサイコパス野郎は、この手で処分したほうがいいのではないか。銘苅と白岩のSPチームは自分たちの倫理観がいかにモロいかを自覚する。それでも2人は清丸の護衛を続ける。それは倫理観ではなく、“職業意識”が体の隅々にまで染み付いているに過ぎない。
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