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残酷すぎる退屈な日常から生まれるドラマ アニメ『悪の華』第1回先行上映会レポート

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「アフレコをしているときは、いわゆる外画の吹き替えをやっているような感覚だったんですが、これを見たときに“あ、やっぱりアニメだ”と。でも滑らかに動くし、なんだろう、これは。ジャンルがない」(伊瀬)

「私はいい作品やいい曲に出逢うと、胸がキュン♪ とする性癖の持ち主なんですが、これを見た瞬間はキュンとしなかったんですよ。ギューっとして、ずっとざわざわ、ざわざわしているんですよ。なんか、すっごくて……(長濱「要領得ないな、あなたは(笑)」)そうなの、今日はうまく言えないの、衝撃が大きすぎて」(日笠)

 あまりに長尺の会話ゆえにそのすべてを起こすことは差し控えるが、異様にも映ったのは、登壇者の姿勢だ。明らかに「お仕事」の域を脱していた。商業用に体裁を整えよう、時間内に収めようといった調整の意識は最低限にとどめ、飾り気のない言葉で熱く語り続ける。心の底から作品に共感し、情熱を持って取り組んでいる様子が伝わってきた。上映後のトークは最初の質問の時点で残りわずかとなっていて、当然、終了予定時刻を大幅に超過する。それを一向に意に介さなかったことからも、『悪の華』が特別な何かであるということはわかる。

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 アフレコの現場はガンマイクが上方から垂らされるように役者に向かってセッティングされ、声優は本を持たずに、実写のように演技をしていた。役に入り込んだ伊瀬と日笠の間には、劇中の仲村と佐伯の間に漂うのに似た空気が張り詰めるのだという。その芝居の迫力は、確かに映像に乗り移っていた。

 登壇者4人はイベント終了後も約45分間の囲み取材に応じた。テンションはまったく落ちず、じっくりとわれわれ報道陣に付き合ってくれた。その一部をご紹介しよう。

 イベントを終えての感想を問われると、各々、次のように答えた。

日笠 「ちょーお楽しかったです! いつもアフレコが終わると呑み会をするんですけど、今日は(伊瀬)茉莉也がそういう感じで行こうと言っていて。むき出しにしないと『悪の華』に対する思いは伝わらないから、できるだけ変なベールを被せるのはやめようとやっていたら、素で楽しくなっちゃって。でもでも全然しゃべり足りなくて、3時間でも足りないんじゃないかと思っています。会場の様子がわからないほど作品にすい込まれていました」

伊瀬 「しゃべり足りないですね。短いな~! と思いました。だいぶオーバーしてるんだけど、それでもしゃべり足りないということは……いや、もちろん、どの作品にも愛情を持って全力投球なんですよ。だけど、この『悪の華』は特別なんですよね。そう思わせられる原作の力と、監督の熱意と……美術さんだったり音響さんだったり、プロフェッショナルな方々が一切手を抜かないんですよね。だから、私たちキャスト陣も絶対に手を抜けない。ちょっとでも手を抜いた瞬間に負ける気がするので、監督の熱意、画、音、すべてに負けないように立ち向かっていかないと、この作品の本当の意図する、一番奥の深い深い伝えたいところが伝わらないんじゃないかと思うので。それ……ですね……何言いたかったんだろう。(長濱監督「感想だよ(笑)」)感想か。そういう思いで望んでいるので、やっぱりそれは伝えきれない! 短いから。(上映中)後ろで見させてもらったときは、もう映画を見ているような感覚になっちゃって。(日笠「かっこいい~もう」)かっこいい。センスがいい。面白い!(日笠「天才だって!」)それに尽きます」

植田 「ずっと言っているんですけど(トークショー中でも言及した)、2回目を見ると本当にすごい。1度目は「こんな動き方をするんだ」とか画のほうに集中するんですけど、2回目以降だと自然に見ることができて、話がすっと入ってくる。ロトスコープという手法で去年の夏に撮影して、暑い中、実写キャストみんなで必死に頑張りました。声優キャストも合わせて作品に向き合い、全力でぶつかってきたことがこういう形で見られると、間違っていなかったんだという思いで、本当に幸せです。

 2人(日笠、伊瀬)から聴く話はすべて刺激になります。こういう言い方をするとよくないのかもしれないけれど、すごい声優さんたちもこんなに悩んで作品に取り組んでいる姿を見ると、自分には今まで(声優経験は)何もないので、全力でぶつかっていくしかない。全力でぶつかっていかないと、関わったみなさんに悪いと思って……話がずれてしまいましたが、(共演が)この2人で本当によかったです。

長濱監督 「たくさんの方と一緒に見られたことが、すごくうれしかったです。先生(押見修造)や、実写キャストのみなさん、声優さん、たくさん来てくださって。みんな「すごかった」と言ってくれました。今まで映像を見ていないので、今日見て『すごかった』と言ってくれたことが、何よりうれしい。みんなが、自分がやった役、自分が参加した作品がどうなるのかを、ここで見てもらえたことと。それに関わった役者の口から、この作品に命をかけているとか、けっこうウソの話も出てきたんですが、死ぬ死なないとか。ただ、そのくらいの気持ちで、わたしたちはこの作品に関わったのだ、ということを、それこそ伊瀬茉莉也や日笠陽子の口から聞けたら、現場のスタッフはますますやらないといけないな、と思うし。

 伊瀬がさっき、みんなすごいプロフェッショナルだと言っていたけれども、そのひとりですからね、あなたも。あなた方はその一部なんだから。あなたたちの芝居を見て、だからこそ画を起こしているアニメーターは、佐伯奈々子の顔がぐちゃぐちゃになっちゃいけない、かわいくないように見えてはいけない、と思うし。仲村のちょっとした鋭い視線や立ち居振る舞いというものに、ブレがあってはならないとみんなが思って、つくり上げている、そのピースのひとつなので。植田くんもそうですけれどもね。そういう意味では、みんなが志を同じくするというか、角合わせをする時期だったと思うんですね。ずっと積み重ねてきたものはあったんですけど、ピシっと形を一回合わせる意味でも、今日の試写会はとんとん、と角を合わせて『あー、きれいに揃ってるね。こんなんなっちゃってる』と、一度みんなで再確認できた、素晴らしいイベントだと思います。ありがとうございます」

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