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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 海賊国家といわれるソマリアに林立する「国家のようなもの」その実態に迫る!【後編】

海賊国家といわれるソマリアに林立する「国家のようなもの」その実態に迫る!【後編】

Somali3-3.jpg私の面倒をみてくれたモガディショの美人ジャーナリスト(右)。

高野 まあ異様な本でしょ。タイトルが『謎の独立国家ソマリランド』で、こんなしっかりした作りで、帯も「西欧民主主義、敗れたり!!」って言い切っているし。本の雑誌社の担当編集者とも話したんだけど、本当に面白い本はちゃんと売れるんだなって。出版に対して未来を感じたというか、まだまだ捨てたもんじゃないなと思いましたね。

――存在感がすごくあるというか密度が濃いというか、詰め込まれているというのが厚さだけじゃなくてパッと見でわかりますね。

高野 編集者とレイアウト担当の人と、完璧な本を作りたいと話していたんです。地図なんかも、すごく変で複雑な地図ですが、あれも繰り返し繰り返し直して文字の大きさや色にこだわって、いかにわかりやすくきれいに仕上げるかを徹底してやったんです。地図にはやっぱり色がつかないとわからないということになり、カラーは8ページと決まっているので、最後の写真を削って入れたんですよね。

――500ページを超える大作ですが、執筆には苦労されたんですか?

高野 自分の中では、苦労は少ないほうですね。書き直しは少なかったです。最初に書くときにものすごくいろいろ書いて、流れを自分の中で考えて作りましたからね。

――最初から最後まで、ちゃんと考えられているわけですね。

高野 そうです。関係者全員で、完璧に作ろうと頑張りましたから。ソマリはもうこれ一冊でOKなんだ、という本にしたかった。自分の集大成なんですよね。今まで25冊近く書いてきたけど、10年前だったら、この本は書けなかったと思います。理由は、技術的に難しいから。情報だけ並べるのであればそれはできるし、ストーリーだけ書くのであればそれもできるんだけど、情報を入れてそれをストーリーにしていくとなると、こんなに要素が多いと、めちゃくちゃ難しくなってくる。10年前だと、たぶんそれが技術的にできなかったと思うんです。

――ソマリランドでシリーズ化したいと考えているんですか?

高野 あと6~7冊は書こうかなと。まず銃撃戦を含めた続編を考えていて、それから向こうで親しくなったジャーナリストを日本に呼んで、彼らと一緒に本を作ることを計画しています。来年にはラクダで古代王国を探す旅に出る予定。そんな夢を持てる国なんてないですよね。僕にとってソマリというのはライフワークなので、それだけやるのではなくて、ひとつの大きな縦軸として今後も続けていきます。
(取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)

Somali_chosha.jpg
●たかの・ひでゆき
1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに、文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。1992~93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、08~09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。主な著書に『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』『ミャンマーの柳生一族』『異国トーキョー漂流記』『アジア新聞屋台村』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。

最終更新:2013/03/29 21:00
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