海賊国家といわれるソマリアに林立する「国家のようなもの」その実態に迫る!【中編】
#海外 #本 #インタビュー
■ソマリランドの名物「カート」とは何か?
――高野さんは覚醒植物「カート」を食べて地元の人と交流していましたが、今後ソマリランドを訪れる人が食べるには難易度高いですかね。
高野 カート居酒屋(カートを提供するカフェ)は、あまりお勧めしないですね。あれは地元民にカートをたかられる(笑)。
――他の国では、覚醒植物なんかの葉っぱを噛んだらペッと吐き出すことが多いですけど、ソマリアでは食べるそうですね。
高野 全部飲んじゃいますね。
――おなか痛くならないんですか?
高野 それが、すごく腹の調子がよくて。僕は胃腸が弱くて下痢しやすいんだけど、ソマリアでは一回もなかった。ものすごく胃腸にいいんじゃないかな。砂漠の中をトラックで運ぶから土埃とかいっぱい付いているはずなのに全然平気ということは、多分葉っぱに殺菌作用があるんじゃないかと思います。
――著書では随所に、どこかに行くと「地元の人とカートやりたい」と書かれていますが、それくらい一般的に普及しているものなんですね。
高野 日本でいうと酒を飲むのと同じ感じです。現地の人と友達になって、その人に「カート食べたい」と言えば連れて行ってくれますよ。楽しいと思いますよ。
――普通の食事で、お勧めはありますか?
高野 ソマリランドの食べ物は、すごくおいしいです。特に日本人が親しみやすい味で、メインはヤギ肉と、あとはラクダ肉。魚もあります。主食は米・パン・パスタ、あとはアンジェラというトウモロコシを小麦粉で練って引き伸ばして焼いた、インドの主食チャパティみたいなものがおいしいです。
■旧ソマリアで発揮された日本の存在感
――ソマリアの三地域における日本の存在感って、どうなんでしょうか?
高野 日本は“すごい国”だと思われていますよ。現地では、車が99%日本車で、みんな日本の中古車に乗っています。ネットは結構普及していますが、まだアップルが入っていないので、パソコンもほとんど日本製です。スマホは、サムスン製品が最近出てきていますけどね。Wi-Fiを使えるところが多く、中級以上のホテルにはまずWi-Fiが通っているので、日本の田舎より全然使えます。砂漠で電波が飛びやすいから、日本みたいにちょっと建物や山の陰に入るとつながらない、みたいなこともない。
――こうやってみてくると、ソマリランドがかなり身近に感じられるから不思議ですね。ソマリランドに行きたいという人も出てくるかもしれませんが、高野さんお勧めの入国ルートはありますか?
高野 一番面白いのは、僕もまだやっていないんだけど、イエメンから船が出ていて、それで渡るというのを一回やってみたい(笑)。
――それはちょっと上級編ですね。そういう船は、海賊に拿捕されないんですか?
高野 大丈夫、知っている船は襲わない。だって、復讐されるから(笑)。
(【後編へ続く】取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト<http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/>)
●たかの・ひでゆき
1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに、文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。1992~93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、08~09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。主な著書に『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』『ミャンマーの柳生一族』『異国トーキョー漂流記』『アジア新聞屋台村』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。
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