えっ、小泉麻耶が身障者専門のデリヘル嬢に!? “性”のバリアフリー化『暗闇から手をのばせ』
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体が思うように動かないため、沙織は騎乗位でサービスすることに。
といっても、誰もがホーキング青山のようにオープンマインドの持ち主になれるわけではない。健常者と呼ばれる人でも傷つくことを恐れて、心を固く閉ざしたまま生きている人は少なくない。『暗闇から手をのばせ』の主人公・沙織(小泉麻耶)もそんなひとりだ。煩わしい人間関係を避けて生きているうちに、いつの間にか風俗の世界で働くようになっていた。身障者専門の派遣型風俗店を職場に選んだのは、「楽そうだし、体が動かないから怖くなさそう」という安易な理由からだった。介護に関する知識がまったくないまま、店長(津田寛治)の運転する車で予約客の待つマンションへと向かう。沙織にとって初めての客となったのは進行性筋ジストロフィー患者の水谷(管勇毅)。徐々に筋力が低下し、歩行や起立ができなくなる難病だ。20代で亡くなる患者が多い。全身にタトゥーを入れたコワモテ風の水谷だったが「オレ、34歳になっちゃった。いつまで生きられるかな?」と沙織に問い掛けてくる。自分の人生すらちゃんと考えたことのない沙織は返す言葉が見つからない。水谷の発射した精液がとても苦く感じられる。
悩む間もなく、沙織は次の客が待つラブホテルへと向かう。両手両足に障害を持つ中嶋(ホーキング青山)を電動車椅子からベッドへと移動させるのは難儀だったが、中嶋は底抜けに明るい性格。あまりに達者なトークに、ずっと緊張を強いられていた沙織は吹き出してしまう。調子にのった中嶋は「ホンバンやらせてよ」と何度もおねだりしてくるが、そこはデリヘル嬢としての矜持を守る沙織だった。中嶋も機嫌を悪くすることなく、沙織の懸命なプレイを満喫する。サービス終了後、ホテル街を中嶋と沙織は仲良く並んで歩く。束の間の恋人気分を味わった中嶋はとても幸せそうだ。お客たちは性欲の解消だけでなく、人と人との触れ合いを求めていることに沙織は気づく。
自分を必要とされる喜びを覚えた沙織だったが、3番目の客と出会い、再び厳しい現実を突き付けられる。健司(森山晶之)はバイク事故で脊髄を損傷した後天的な身障者。自分の身に降り掛かった不幸をまだ受け入れられず、自宅に引きこもったまま。性的な刺激を与えることで下半身の機能が回復するかもしれないと母親(松浦佐知子)が勝手に予約を入れたため、余計に機嫌が悪い。裸になった沙織は騎乗位でベッドに寝たきりの健司にサービスを尽くすが、彼の下半身はいっこうに硬くならない。沙織が汗だくで責めれば責めるほど、さらに不機嫌になっていく。自分の無力さに落ち込む沙織。たった1日の体験入店だけでフェードアウトしてしまっていいのか。それまで面倒なことは避けて生きてきた沙織だが、自分の知らない世界に足を踏み入れたことで次第に意識が変わり始めようとしていた。
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