大友克洋最新作『ショート・ピース』製作発表会見レポート 大友アニメの現在地
#アニメ
終盤の質疑応答では大友監督がさまざまな質問に答えた。
――注目しているクリエーターは?
「たくさんいる。イラストや漫画のように、アニメーションにも新しい人材が入ってきて活気づけてほしいけれど、今はアニメーションは厳しいところがある」
――『ショート・ピース』と同じ日にスタジオジブリ作品も公開されるが、意識しているか?
「ジブリにはかなわないですからね(苦笑)。僕らは僕らで頑張るしかないかなと」
――日本が舞台というキーコンセプトは、どこから浮上したのか? 震災との関連性は?
「この企画は震災の前にあったので、実はあまり関係がない。『スチームボーイ』でイギリスを舞台にしていて、短編では日本をやりたいという話をしていた。クールジャパンなど日本を見直そうという話があったので、くくりが大きいですが、日本がテーマになるんじゃないかとプロデューサーの土屋康昌さんと話をして。本当は過去があって、江戸時代、そのさらに昔のファンタジックなもの、未来がある。現代は途中で立ち消えてしまいましたが、日本を過去から未来まで含め、なるべく新しい、若いいろいろなアニメーション作家に作ってもらおうというのがコンセプトです」
――なぜいま日本なのか、その思いは?
「今でなくともいいんですけどね。僕らはずっと日本なんですが。後から少しずつ震災に関する思いが入ることはあるんですが、そんなに深く考えているわけではありません」
――今後、長編作品の可能性は?
「震災以降、劇場用アニメーションの資金集めに厳しい部分があり、なかなか冒険できない時期がありまして。実写でも企画が通らず、映画の上映が延びてしまったり。それが今やっと少しずつ回復しつつあり、企画は以前から出していましたので、今から少しずつ動きだすようになるんじゃないかなと。僕も期待しています」
――総括のメッセージをひとこと。
「いろいろな思いを持った若い作家たちが、日本について自分たちが思っていること、SFだったり時代劇であったり、それらを新しい形で出せるという素晴らしい機会をいただき、みんな非常に一生懸命作りましたので。みなさんに見ていただきたいと思います」
大友監督の口から何度か「厳しい」という言葉が出たが、そういった状況から振り絞られたものがこの『ショート・ピース』だとすると、よくないときにもどれだけの質のものを出せるのか、日本のアニメ力が問われる作品になりそうだ。
新しいものを生み出さなければ、という気概は確かに伝わってきた。その先にあるかもしれない長編のプロローグとしても、目撃しておく必要があるのかもしれない。
(取材、文、写真=後藤勝)
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