「日本が好きだから」外国人たちの思いに日本の魅力を振り返る『YOUは何しに日本へ?』の多幸感
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その自転車で坂道に苦労しつつも、津軽半島の竜飛崎にたどり着いたYOU。そこに沈む夕日に目を潤ませる。
「この時間はボクの一生の宝物だよ」
ちなみに彼はこの後、1カ月半をかけて日本を縦断。青森から日本海沿いに鹿児島まで渡り、太平洋側を通って東京まで戻ってきたことが、その後の放送で報告される。4,000キロをダブルフロントライトの5段変速ギア付き自転車で走りきったのだ。この旅の模様が放送された回は、ギャラクシー賞2月の月間賞に選出された。
テレビで外国人を取り上げる時、どうしても分かりやすさからか、外国人を必要以上に持ち上げるか、逆に日本語が不自由であることや日本の常識から外れていることから、自然と「おバカタレント」のようにして扱ってしまう。外国人の日本人にはないすごさを見せるか、外国人の日本での滑稽さを笑うか、どちらかである場合がほとんどだ。
しかし『YOUは何しに日本へ?』は違う。下からでも上から目線でもない。まっすぐ外国人と対峙する。だからこそ彼らの素の表情が見える。そんな彼らはわざわざ遠い日本に来ただけあって、ほとんど例外なく「日本が大好き」と言ってくれる。日本に来たことの喜びを素直に表現してくれる。
オタク文化が大好きで、興奮しているYOU、ロリータ・ファッションに憧れるYOU、ビジュアル系バンドや嵐を追っかけるYOU、ポップカルチャーが大好きで道行くあらゆるものに「カワイイ!」を連発するYOU……。みんな日本を全力で満喫している。
「僕の生まれたフランスと彼女が生まれた日本の間でプロポーズをしたかったんだ」
ほんの5時間前に飛行機の中でプロポーズをしたばかりのフランス人のYOU。「添乗員が一緒に祝福してくれたんだ」と興奮を隠し切れないYOUと日本人の彼女。彼は「最も美しい神社」という明治神宮で結婚式を挙げるのが、実際に夢に見るほどの念願だったという。そんなYOUたちの結婚式に番組は密着する。
義母の作ってくれるきんぴらごぼうが大好物で「前世は日本人」と言うほど日本を愛するYOU。「だけどザンネン、日本語忘れちゃった」と笑う。そんなYOUは披露宴の最後、彼女に「気持ちを日本語で伝えたい」と片言の日本語でスピーチをするという。
「ユカちゃん、そしてこのキセキにカンシャです。ユカちゃん、急いで他の男とケッコンしないでボクのことを待ってくれて本当にアリガトウ。お義父さんに会えたこともシアワセに思ってます。お義母さんはいつもおいしいきんぴらごぼうをアリガトウゴザイマス」
YOUはつっかえながらも、涙ながらに語りかけるのだった。
披露宴が終わり、緊張から解き放たれたYOUは笑って振り返る。
「夢の中で、ボクはもう少し日本語が上手かったんだけどネ」
「好きなもの」を語る人を見るという、喜びと多幸感。それが『YOUは何しに日本へ?』には詰まっている。同時にその「好きなもの」が我々の住む「日本」であることに、誇らしい気分にもなる。強い思いが偶然の物語を作っていくことを改めて思わせてくれる、極上のドキュメンタリーである。そしてYOUが魅力的であればあるほど、日本の魅力も再発見できるのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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