サイエントロジーをモデルにした『ザ・マスター』人間は何かに依存しなくては生きていけない?
#映画 #パンドラ映画館
(フィリップ・シーモア・ホフマン)の懐の深さに魅了されていく。
心の問題を抱えた人々がランカスターの元に集まってくる。ランカスターは被験者に暗示をかけ、被験者の過去から前世へと遡っていき、不安の原因を探り当てていく。不安の原因が分かり、安堵する被験者たち。「単なる催眠術ではないのか?」と疑問を唱える記者が現われるが、その手の邪魔者は戦場帰りのフレディが有無を言わさず強制排除していく。悩める者たちを優しく救うランカスターが教団の表の顔、トラブルを力づくで処理するフレディが裏の顔となり、「ザ・コーズ」は信者数を増やしていく。教団においてフレディの存在は欠かせないものになっていく。
ランカスターの妻ペギー(エイミー・アダムス)は部外者の居候であるフレディのことを煙たく思うが、ランカスターはフレディを自分の片腕として寵愛する。教団が大きくなればなるほど、フレディが作ってくれるあのオリジナルカクテルを呑まずにはいられないからだ。多くの信者たちを悩みから解放していくランカスターだが、ランカスター自身の苦しみを理解し、分かち合ってくれるのはフレディしかいない。コドクな王様とそのコドクを癒す道化師のように、ランカスターとフレディは相互依存することで関係を深めていく。
ジョン・トラボルタ主演のトンデモSF映画『バトルフィールド・アース』(00)の原作者であるL・ロン・ハバードの素顔とサンエントロジーの内幕をバンバン暴いた実録ものかと興味津々で観始めたが、サイエントロジーはあくまでもランカスターが作った教団のモデルにとどめ、心的外傷を抱えた戦場帰りの男と新興宗教の教祖との風変わりな友情ものとしてドラマは展開していく。やがて教団が大きくなり、2人の関係は変わらざるを得なくなってくる。教団が社会に大きな影響力を持つようになったこともあり、ペギーはフレディに酒を断ち、教団の一員らしく規律を守るよう命じる。ランカスターもフレディに教団の後継者になることを望む。だが、それはフレディが求めていたものではなかった。より自由に、依存せずに生きられる広い世界へとフレディは飛び出していく。
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