「スナックにはスナックの歌がある」酔街が教えてくれる“やらかさない”生き方
#インタビュー #浅草キッド #玉袋筋太郎
――その集団催眠が唯一届かない場所がスナック?
玉ちゃん スナックには結界が張られてるから(笑)。人間力や心のつながりという部分で結界が張られてる。そこにあるのは手つかずの自然。アマゾンのジャングルがなくなったら、地球なんかすぐ滅んじまう。スナックっていうのは、地球上になくてはならない場所なんですよ。世界遺産だね。
――日本が誇る世界遺産(笑)。
玉ちゃん オリンピック招致の役員なんか、全員スナック連れていけばよかったんですよ。飲ませちゃって歌わせちゃえば。即キマリですよ。もてなし、譲り合い・・・・・・日本のいいところが全部詰まってるじゃないですか。
――ハイテクな仕掛けなんかより、ずっといいですね。
玉ちゃん さまざま人間模様がそこに現れるし、だからこそ、それを面白いと思えなきゃホントもったいないと思うんだよね。不思議なことにだんだん年取っていくと分かるんだよ、それが。俺だって毎晩銀座で豪遊して、六本木でチャンネーたちをアフターに連れていくとか、そういう酒池肉林の暮らしをしたいですよ。やろうと思えばできないこともないのかもしれないけど、それは自分の身の丈じゃないんですよ。だから、スナックに執着しちゃうっていうのもあるんだと思う。もう一人の自分がさ、言うんですよ。「玉袋、オマエごときがなにやってんだ」って。やらかしちゃったな……っていう人間になりたくない。
――生き方そのものがスナックを求めるようになる。
玉ちゃん 不思議とそうなんだよね。本当に、そういう人間になってきちゃってるんだよね。自分が小さい頃憧れた、酔街の人間に。かっこつけない、やらかさない生き方の。それは伊集院(光)も作家の西村賢太も、この間飲んだ宇多丸も、分かってくれるんだよ。一から十まで説明しなくてもね。お互い譲り合って、最終的に取っ組み合いになっちゃうような感じ。落語的な与太郎的な、気を使わないように精いっぱい気を使い合うような、俺の周りにいてくれる仲間っていうのも、またすごくスナック的なんだよね。
――生き方も仲間も、スナックとリンクしていると。
玉ちゃん 年取るに従って、かっこつけた部分とかチャラチャラしたこととか、そういう上っ面の生き方や付き合いが虚しく感じてくるんだよね。そんなエラそうに言う俺だって全然完成してないけどね。早く年取りたくて仕方ないよ。俺、アンチアンチエイジングだから(笑)。
――「酔街エレジー」もまた、装飾や虚勢を脱ぎ捨てたところにある歌のような気がします。
玉ちゃん 演歌や歌謡曲はどうしても時代から置き去りにされがちなんだけど、結局はブーメランと一緒で、またここに帰ってくるんだと思うよ。歌謡曲もスナックも、根っこは庶民風俗。庶民の生活から自然発生的に生まれたものなんだよね。ファミレスじゃなくて大衆食堂だから、ライスって言えば「大盛りにしてあげて」って勝手に出てくるような世界。それは歴史が作り上げるものでもあるから、ゆっくり地に足つけてね。それってメディアが育てたんじゃなくて、人が育てたものなんだよね。
――最後に、「酔街エレジー」は、どんなシチュエーションで聴いてほしいですか?
玉ちゃん 「ちょっとやりすぎたな」とか「肩肘張ってんな」っていうときに、チューニングを合わすような感覚で、この曲を聴いてほしいんだよね。まぁ、世の中そんなもんじゃねぇかっていう気持ちになれるように。
(文=西澤千央)
●発売記念イベント
3月20日(祝)
【第1ステージ】11時~赤羽美声堂(北区赤羽2-1-20 ※JR赤羽駅から徒歩4分)
【第2ステージ】13時~ミュージックショップ ダン(北区東十条4-5-25 ※京浜東北線東十条駅から徒歩5分)
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