従業員がガソリンスタンドを占拠して決起! 残業代未払いなど不当労働に抗議
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従業員がガソリンスタンドを占拠して決起! 残業代未払いなど不当労働に抗議 – Business Journal(3月17日)
パワハラ・いじめ・不当人事・解雇・雇い止め……と、多くの人びとが泣き寝入りせざるを得ない状況が増える中で、自分の脚で立ち上がった人たちがいる。
東京府中市のガソリンスタンド「白糸台サービスステーション」(株式会社・柴田商店・柴田昌克社長)の労働組合員14人だ。説明がないまま社長が破産手続きをとり従業員20人全員を解雇、突然の事業所閉鎖に怒った従業員らは職場を占拠し、1月29日夜から泊まり込みで50日間近く自主管理営業を続け、再建をめざしている。
3月12日に復活決起集会をスタンド敷地内で行うと聞き現場に赴くと、東京管理職ユニオンや全国ユニオンの組合員なども応援に駆けつけ、20数名が集まっていた。
常時4~5人が泊まり込んで会社によるロックアウトを警戒しているスタンド内には「僕たちにも家族があります」「お客様は、現スタッフによる営業継続を望んでいます」などと横断幕やノボリが並び、アルバイトの高校生も腕章を付けて集会に参加するなど、現場は活気づいている。
集会は始まったものの、たて続けにお客の車が入り、その都度従業員が誘導して車検テスター業務などを続けていたので落ち着かない。しかし、これは繁盛している証でもあり、顧客からの激励もあるという。
そもそも、なぜ従業員が職場を占拠するなどという事態になったのか。野田辰也委員長(39歳=元工場長、同社は車検整備工場をもつ)とともに自主営業の中心になって働く元統括店長の高橋顕夫さん(41歳)に説明してもらった。統括店長とは、ここから徒歩5分にもうひとつのガソリンドがあり、両方を統括するという意味だ。
「社長と会長(社長の実父)の柴田一族は、地元では知られる代々続く地主なのですが、会社ではきちんとした就業規則もなく、残業の割増もきちんと支払われず、社員の残業代は支払われない。
店長にされると、職能給として月に9万円くらい手当がつきます。それで残業代は完全に支払われなくなり、店長になるとヒラのときより収入が減る仕組みです。まさに名ばかり管理職です。
争議が起きた時点からさかのぼって2年くらいは月に60~100時間の残業代支払がゼロだったのです」
一事が万事このような状態だったため2012年9月30日、従業員10人が残業代の支払請求書を社長宅に送付した。従業員20人のうち14人で結成した労働組合と社長が4回団体交渉したが、話は平行線をたどった。
野田委員長や高橋さんを含む管理職4名は12年12月、従来の企業内労組を維持したまま東京管理職ユニオンに加入し、それ以降は同ユニオンが交渉の前面に出ることになる。すると、それまでは必ず出ていたボーナスが不支給となり、組合員が社長から組合脱退を強要されるなどがあった。東京管理職ユニオンの鈴木剛書記長が言う。
「最近は、争議が起きると経営者が偽装破産、偽装倒産するケースが目立ちます。本件も、社長と実父である会長(ともに代表取締役)は地元では代々続く地主で、ガソリンスタンド、駐車場管理、賃貸物件などさまざまな資産があり、そもそも黒字なのに、なぜ事業閉鎖なのか納得のいく人はいないでしょう。
これまで就業規則も明確に示されず、社員には残業代を払わず、残業や休日出勤の割増も正確には行わず、あげくのはてに何の説明もなく破産しました。偽装倒産の疑いが濃厚で、許されるものではありません。団体交渉が始まって以降、社長は労働組合に対する嫌悪を隠さず、ある組合員には労組脱退を強要するなどしています」
こうしてユニオンは1月21日、東京都労働委員会に不当労働行為救済申立書を提出した。これと前後して事態は急を告げる。再び高橋さんが語る。
「1月に入ってから、業務連絡帳にすべての業務を1月30日以降は止めるように書かれ、数日後に29日まで期限が1日早まりました。何かあるに違いないと判断して何人かで会社に泊まり込んだところ、案の定、翌朝に管財人が来て破産を知らされ、会社からの退去を要求されたのです」
ちなみに徒歩5分の場所にあるもう一店舗はカギをかけられて従業員は入れなくなった。1月29日に職場に泊まり込むという咄嗟の判断がなければ、いまごろはカギをかけられ立ち入りも営業もできず、全員が途方に暮れていただろう。1日ずれてもダメだった。
「将来何かあったときのために」(高橋さん)2011年7月に労働組合を結成していたことも、すぐに行動に移れた原因だろう。
実際に現場に行くと従業員らに活気がありやる気満々なのだが、ガソリンは底をついてしまい、販売することができない。購入するには新たに法人をつくり高額の補償金を支払わなければならないからだ。電話も止められている。
現在は、洗車や車検テスター、そのほかの細かなサービスで営業をつづけており、前述の高橋さんによると、月130万円の売り上げペースだという。
地元に根付き、顧客も多く従業員もやる気を見せていることから、支援をしてもよいという企業も現れている。だが、破産したので、敷地や建物設備一切が管財人の管轄下にあり、公開競争入札を実施しなければならない。
支援に前向きの企業が落札すれば、労組は新法人を設立し、落札企業に家賃を払う形で営業再開していく計画である。しかし、別の人・企業が落札した場合は全く不透明になる。記事冒頭の3月12日の復活集会は、同日に行われた入札希望者の内覧会にあわせてのものだった。
野田辰也委員長は「順調にいけば、4月中ごろまでに新会社を設立させ、本格的に営業を再開したい」と抱負を語っている。
誰が落札するかによって展開は異なるが、結果がどうあれ、従業員たちは営業の継続と雇用の確保を要求し続ける予定だ。
入札期限は3月26日。現在も事務所内に布団を持ち込み、泊まり込みでロックアウトを防ぎ自主営業が続けられている。
(文=林 克明/ジャーナリスト)
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